語るに落ちる
 生意気なのがいいんだよ。
 口も態度も悪くていい。
 ついでに目つきも。
 懐かねー犬みてーな、野良上等って感じの。
 気ぃ荒くて、犬は犬でもむしろ狂犬?みてーな。
 それでいて、こっちの言いてーことは黙ってても全部わかる奴がいい。
 いらつくからバカは駄目だ。
 ケンカもつえーのがいい。
 相手に自分より力があるからって尻尾巻かねー奴。
 倒されても倒されても向かってくる。
 そーいう意味ではバカがいいな。
 年上か年下でいったら断然年下。
 自分でいろいろ仕込みてーからな。
 髪は短くて、背はとりあえずオレより低きゃいいよ。
 露出度は高めで。
 その方が話はえーだろ?
 胸んとことか詰まった服だと、出し惜しみしてんじゃねーよって思うしな。

 そーいうのに近くをうろちょろされたらたまんねーよ。
 絶対オレのもんにしてやるぜ。




 その頃たまり場になっていた倉庫で、男ばかり夜通し飲んでいたとき。
 阪東は珍しく千田にからまれた。
 千田はその日何か嫌なことでもあったのか、ピッチは最初からフルスピード。
 早々に酔っ払っていた。
 ふらふらした足取りで近づいてきて、お前は女に興味がねーのか、と。
 無理やり肩を組んで酒臭い息を吐く。
 他の奴なら許さない真似だが、一応ダチだ。
 ピッチが速かったのは、どうやらまた女に振られたかららしい。
 阪東はオレより全然モテるくせに、とちょっと涙目で。
 お前と比べるな。
 即答しかけて口をつぐむ。
 一応ダチだ。
「別に興味がねーわけじゃねー」
 代わりにそう言うと、周りにいた他の奴が、じゃあどーゆう女が好きなんスか、と聞いてきた。

「そーだな……」

 気がつえーのが好きだ、と。
 最初に言ったのはそれだけだった。
 それじゃわかんねーよ、と言われて、もう少し微に入り細に入り。
 全部言い終える頃には、なぜか皆黙りこんでいた。
 組んでいた肩を千田がそっと外す。
「どーした?」
 沈黙の意味がわからず不機嫌になった阪東に、
「……阪東」
 ややあって、一同を代表するように山崎が口を開いた。
「それ、本当に女か?」




 当時、鈴蘭においては、阪東一派と、いわゆる海老塚三人衆との抗争まっただ中。
 その場にいた全員、千田の頭にも山崎の頭にも、同じ男の顔が浮かんでいたとかいないとか。




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 短。
 春道転校以前。
 千田や山崎たちの頭に浮かんだのが誰かはもう言うまでもなく。
 個人的に1巻は13巻や14巻と並ぶ阪ヒロ巻だと思うのですよ。





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