ギボン著『ローマ帝国衰亡史〜変態皇帝列伝〜』


ヘンリエッタ

クラエス

ローマ帝国に関する短い解説

『ガンスリンガーガール』のトリエラちゃんは、クマのぬいぐるみにローマ帝国皇帝の名前をつけております。

あまり、勧められないような気がします。なにしろ、ローマ帝国皇帝は、変態ばかりです。変態は、2千年前からいたのですね。

お前が言うなよ、というツッコミは、やめてくれるとありがたいです。

で、ギボンの『ローマ帝国衰亡史』を元ネタにして、その変態ぶりを、月元が紹介しましょう。

まずは、ローマ帝国についての短い解説なんですが、政治体制によって3つの時期に分けられています。王政、共和政、帝政です。 はじめ、小さな都市国家からスタートしたローマは、王様が支配していたんですが、王様は追放されて、共和政が確立しました。で、今度は、王様ではなく、執政官という任期1年の役職の人が権力を行使して、ローマを統治するようになります。執政官は、毎年二人づつ選挙で選ばれます。

共和政時代のローマは、ひたすら戦争をしました。そして、戦争に勝ち続けました。途中、手痛い敗北を喫した事もありましたが、最終的には対外戦争すべてに勝利を収め、周辺国家すべてを征服します。こうして、ちっぽけな都市国家に過ぎなかったローマは、なんと、地中海をぐるりと囲った地域すべての支配者になりました。

こうして国土が大きくなってくると、今までになかった問題がおこります。このへんの事情はいろいろと複雑なんですが、一番大きな問題が、内乱です。共和政ローマの末期には、それぞれにボスをもつ集団が、政治の主導権を握ろうと互いに争い、同じローマ人どうしの戦争、恐怖政治による大量粛清など、まさに時代は世紀末、愛をとりもどせ、といった時代になるわけです。国土が広いと、こういった政治的な争いが、そのまま国家分裂の危機になっちゃうみたいです。

で、それなら、とりあえずは、一人に権力を預けるような政治体制にもっていこうとなるわけです。ちょっと待て、王様のいる国でも内乱はおこるじゃないか、と言う人もいるかもしれないけど、王様のいる国で、反乱おこす奴らって、「反乱軍」ですよね。反乱軍は、王様を倒さない限り、正統派にはなれませんし、倒すまではただのテロリスト集団です。こういった構図があるので、王様のいる国での反乱というのは、王様がとってかわられるか、反乱が鎮圧されるかで、とりあえず分かりやすい形で内乱は終息します。

だけど、共和政だと、力をもったボス同士が横一列だから、いつまでたっても内乱が終息しないんですよ。いずれかの勢力が正統派になれば、それに反抗する奴らが反乱軍、ってことになるけど、こういった正統派の権威づけをする元老院ってのが、日和見主義者なんで、勝った方に節操無く正統派の権威づけをするんです。王様のもつ正統性に比べて、それはせいぜい、「みのもんたが褒めている」程度の権威なんです。だから、「勝てば官軍」の単純なイス取りゲームの繰り返し。

王様に歯向かう場合のことを、考えて下さい。よっぽど悪い王様でないと打倒して、王様にとって代わる理由は無いよね。でも、共和政下でたまたま権力を握ってる奴に取って代わるのに、そいつが悪い奴である必要はない。カエサルが、国法を破って、ルビコン川を越えたとき、「サイは投げられた」とか言ったけど、共和政下の内乱は、サイコロゲームに例えられるだけの単なる権力闘争に過ぎないわけです。もちろん、カエサルは、この時、自分らが、国法を破った賊軍の立場であるとか、全く考えなかったでしょうね。

おおざっぱですが、こうした、いつまでもいつまでも続く内乱を終わらせるために、一人に権威と権力を預けた政治体制、帝政が始まります。事実、内乱の時代は終わります。

で、とりあえずは、タラタラタラタラと終わる事もなく続いた内乱もなくなり、勿論、外敵にはローマ軍は無敵でしたから、『ローマの平和』と後世に言われる、最も栄えた時代が、帝政時代のローマにやってきます。内乱もない、敵も攻めてこない。あぁー。やっぱり平和っていいわねぇ。平和が一番よぉぉ。

だけど、この平和は、勿論、無防備マンみたいな、ドアホな妄想家が立てたものでなく、より現実的な力、はっきり言えば暴力で勝ち取ったものです。ぶっちゃけて言えばこういうこと。

■ローマの外にいる敵は、
当時の世界最強、無敵のローマ軍によって、たたきつぶされる。もちろん、骨も残らない。

■ローマの内にいる敵は、
世界最強ローマ軍の総司令官にして、その他諸々の権力を握る、最高権力者ローマ皇帝によって、たたきつぶされる。もちろん、骨も残らない。

いかがですか皆様。なんだか、『スターウォーズ』の暗黒皇帝が支配する、銀河帝国みたいだよね。ただし、皇帝自身が、ローマの敵になったら暗殺されます。

だけど、ある時期までは、これで一応は、うまく行ってたんですよ。それは、皇帝になった人たちが、少数を除いて、とてつもない力量をもった政治家であるか、野蛮なことを嫌う常識人だったからなんです。ですから、人々に不満はあるけど、圧政にまでは至らなかったんです。 とはいえ、平和といっても、相対的な問題なんですが。後世の我々の基準では、考えないで下さい。後の圧政、大混乱、迷信と無知の支配する中世と比べての話です。

ギボンの『ローマ帝国衰亡史』は、この帝政が、うまくいかなくなった時代からスタートするわけです。スタートは、「五賢帝」と呼ばれた、五人の立派な皇帝 の最後の皇帝、マルクス・アウレリウス・アントニヌス帝のあとを継いだ、コンモドゥス帝からです。ここらへんから、帝政による圧政がはじまり、ローマ帝国は滅びの道を歩みます。

そこから、『変態皇帝の時代』とも言うべき、すさまじい時代になるのよ。

著者のギボン先生は、力を持った者が、力を持たぬ者を奴隷のように支配するのは良くない、そういった隷属的な支配によるヒエラルキーのつくる社会は、人間を愚かにし、社会を病み、国を弱くする。ローマは、帝政による「政治的に隷属的である支配」と、キリスト教による「宗教的に隷属的である支配」によって滅亡したのだ、と解くわけです。人間を、隷属的な支配から解き放ち、人間を自由にすることが、社会を健全に保ち、国家を強くするのだ、と。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・建前はね。建前は。

ギボン先生の本音?決まってるじゃない。この時期の、ローマ帝国の変態ぶり、もろもろの悪徳が、ゴシップみたいで面白いからですよ。そんな不謹慎な・・・・っていうかもしれませんが、確かに、ギボン先生は、税制だとか、国家体制だとか、そういったものもマジメに書いてんだけど、そういったところを書くときより、変態皇帝の変態プレイ、下劣な人々の悪徳を書くときの方が、明らかに文章が凝ってるんですよ。

ギボン先生は、悪徳はいかん、変態は良くない、と言いつつ、悪徳や変態ばかり、一生懸命にがんばって、書くんです。それも、かなり凝った名文で。こういった見方をする自分って、ひねくれてんのかなあ。

テレワークならECナビ Yahoo 楽天 LINEがデータ消費ゼロで月額500円〜!
無料ホームページ 無料のクレジットカード 海外格安航空券 海外旅行保険が無料! 海外ホテル