●2006年9月
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| ふっふっふ、この娘は頂いていくぞ! | |
| あーれー、おたわむれをー。 | |
| …時代劇なの? | |
| みそかちゃん、セリフ違うよ。そこは 「あーれーお代官様ー」でしょ。 |
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| あ、そうだったっけ。てへへ。 | |
| もうナニが何だか。 | |
| 一休みしましょ。 美味しいウコン茶とサーターアンダギーが手に入ったのよ。 |
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| わぁい、沖縄大好きー。うたばうたゆんー。 | |
| あ…じゃあ、失礼して、いただきます…。 | |
| お嬢様の舌には、合わないかもね!? | |
| な、なんでそんなに刺々しいんですか!? | |
| 気にしないで。庶民には相手が金持ちだと言うだけで 敵対心を持つ狭量な者が多くいるのよ。 |
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| はぁ…そうなんですか。 | |
| それにしても、だいぶ様になってきたじゃない、かれんの演技。 心の奥底に眠る悪魔的な本性が目覚め始めたというか。 |
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| なにそれ…。あくまで演技ですから。あ、シャレじゃないよ。 | |
| ぷーっ! | |
| わ、マジ笑い。なんか不本意だなぁ。 | |
| 天使と悪魔のお話でしょ?悪魔役には褒め言葉じゃないの? | |
| あの…お姉さん、私の方は、どうですか? | |
| あれ?お嬢様、いたの? | |
| がーん!ひどい! | |
| いい加減にしなよ、お姉ちゃん。ウチまで来て一生懸命 練習している妹の友達に向かって。 |
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| う〜ん…素人の意見として割り切って聞いて欲しいんだけど、 やっぱりもう一つなのよねぇ、みそかちゃんは。 |
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| がーん、がーん! | |
| 正直、恥ずかしさが抜けていないと思うの。今だって 練習なのにあがりきってるでしょ?それで学芸会本番がどうなるか。 |
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| だ、だって…人前で演技なんて…したことないし…。 | |
| なんでそれで主役に抜擢されてるかな…。 あ、もしかして奥手なのを良いことに押しつけられた、とか? |
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| いや?自分で立候補してたよ? 私が悪魔役に決まった直後に。コンマ数秒で。 |
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| あー。 | |
| あー。 | |
| こ、コンマ数秒で納得しないで下さい! | |
| 私の演技をサポートしてくれるつもりで 対等の役についてくれたんだよね。ありがとね。 |
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| …いぇ、そんな…こ、こちらこそ…。 | |
| つっても、そんなみそかちゃんが足引っ張ってたら駄目よね。 | |
| ごごごごごごめんなさぃぃいいっ! | |
| いや、小学生の学芸会だし、セリフちゃんと言える程度で 全然オッケーじゃね? |
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| 甘いわね…私の小学生時代の学芸会は、あまりの感動に 観客全員スタンディングオベーションだったわよ! |
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| なんで「私のクラス」って言わないんだ。 | |
| 評判が評判を呼んでピュリッツァー賞まで貰ったわよ! | |
| 報道賞じゃねえか。 | |
| そういうわけで、みそかちゃん! | |
| は、はいぃっ!? | |
| さっきはきついことを言ってごめんなさい…でもね! あなたにはどこか、光るものがある! |
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| さ、最近生え際が気になることを、どうして…。 | |
| それは百合の宿命! | |
| なんですかそれぇ!? | |
| ともかく!学芸会当日まで私が鍛えに鍛えてあげるから、 泥船に乗った気でいなさい! |
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| つっこまないよ。 | |
| かれん、学芸会はいつなの!? | |
| 明日。 | |
| なんでセリフも覚えてないんだぁあ!! | |
| ひ、ひぐぅっ!ごめんなさいっ! | |
| いいわ、みそかちゃん。電話番号、コレ子機、押して? | |
| え…ウチですか?ウチのどこに繋げば…。 | |
| 人事課。 | |
| あ、はい。ピポパ。 | |
| あるのかよ!?ていうかいくつ回線が!? | |
| はい、かけましたけど…なんですか? | |
| あーっ、みそかですぅー。えへへ、ごめんねー♪あのぉー、 今日はお友達の家にお泊まりするから、よろしくー。じゃあねー♪ |
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| ……血、吐きそう…。 | |
| 痛い…精神的打撃…痛い…。 | |
| ……ごめんなさい……せめて、キャラだけでも似せて…。 | |
| ほらほら、お膳立ては整ったんだから、死んでる場合じゃないわよ。 今夜はみっちり特訓ですからね! |
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| えーっ!? | |
| むしろセリフを覚えていないのは好都合だわ!ストーリィさえ 把握していればあとは心で演技は輝くのよ!アドリブよ! |
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| いや、だから小学生の学芸会なら、セリフ覚えてれば充分…。 | |
| つきひ、アンタもつきあうのよ!エキストラは必要ですからね! | |
| な、なんだその某SOS団団長みたいな強引さは! | |
| さぁ、悪魔と天使が同居するアパートの一室で暮らす 浪人生の波瀾万丈の生活を演出しきるわよ! |
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| なにそのギャルゲーみたいなシチュエーション! | |
| そ、そんなシナリオじゃないですぅ! | |
| あはは…大変なことになっちゃったけど…みそかちゃん。 | |
| はい? | |
| 頑張ろうね。 | |
| …は、はい! | |
| …最近の学芸会は、日曜日に開くのなー。 | |
| 父兄が見に来やすいように配慮してるのよ。その代わり 翌日の月曜日が振り替え休日。…まったく、良い身分よね…。 |
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| なに親指の爪噛んでるの。 | |
| ほら、始まるわよかれんのクラス。 | |
| お。 | |
| ぶしゅーっ!! | |
| す、スモークが吹き出ましたよ! | |
| うん、掴みはOKね。みそか財団に出資させて良かったわ。 | |
| アンタ…もう学芸会レヴェルじゃねえよ。 | |
| はっはっは!この娘は頂いていくぞ! | |
| (お姉さんの言うとおり…心のままに…心の演技を…) あ、あの!悪魔さん! |
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| え?はい? | |
| … … … 好きです! |
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| …なに吹き込んだの、お姉ちゃん。 | |
| …シナリオ無視しろって教えた覚えはないわよ。 | |
| ■ | 「こうして、悪魔と村娘に姿を変えた天使は幸せに暮らしました」 |
| ナレーション臨機応変過ぎ! | |
| みそかちゃん…うちの舞台、2分で終わったよ…。 | |
| …はい…。 | |
| 他のみんな、出番がなかったよ…。 | |
| …樹木の役の人だけでしたね…出られたの…。 | |
| …みそかちゃん…。 | |
| ご、ごめっ…! | |
| 来年は、頑張ろうね? | |
| あ、は、はいっ!頑張ります! | |
| …なに?くっついて。 | |
| いえ…天使は、やっぱりかれんちゃんかな、って思って…。 | |
| なにそれー。みそかちゃんこそ、天使じゃないかな。優しいし。 | |
| あ、え…えへへ。 | |
| …ていうか、あと20カ所は財団に仕込ませておいたのに、舞台装置。、 | |
| …ていうか、来年は卒業だろうに、あの二人は。 | |
| …ていうか、来年って…カレンダ始まって、何年目? | |
| ……ていうか。 |
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