●2006年8月
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| …一番残虐な死刑は蒸し風呂地獄だ、いま決定した。 | |
| ……それ、死刑じゃないし、地獄の一つだし…。 | |
| そもそも蒸し風呂地獄なんてあったかし…ら…。 | |
| …………あ、水、まだ残ってる…。ぐいっ。 | |
| …それ、つきひ姉から滴った汗が溜まったヤツだよ…。 | |
| ぶーっ! | |
| …陽鳥ちゃんなら、垂涎モノだわね…。 | |
| いくらなんでも、来ないだろう…。ヤツも生物、 命を自ら危機にさらしたりはするまい…。 |
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| …………。 | |
| …………。 | |
| …………。 | |
| …本当に来ないね。 | |
| 普段なら「生物的本能なんて愛の前には無意味!」とか 理屈を越えた理屈を述べつつあらぬトコロから現れるのに…。 |
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| ……電器屋さんはまだ…? | |
| まだもなにも、今日は来ないわよ…。明日の夕方になるって…。 | |
| …死刑宣告? | |
| 蒸し風呂は死刑にないって言ったのは、かれんだろ…。 | |
| ……。 | |
| …。 | |
| もう一発殴ったら、直らないかしら…? | |
| や、やめろよお姉ちゃん! | |
| これ以上壊したら余計に直るのが遅くなるじゃない! | |
| だって、だって…なんでこんな時にエアコンが…! | |
| 扇風機も…。 | |
| 冷蔵庫までも…! | |
| ………どこか行かない? | |
| この炎天下へ?死を早めるだけだよ? | |
| …いや、どのみちこのままでは遅かれ早かれ命を落とすだけだ。 ならば意を決して家の外に涼を求めるのも悪くない。 |
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| さすがつきひちゃん。アグレッシヴなあなたなら乗ってくると 思っていたわ。さて、参謀のかれんさん、計画は? |
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| はぁ…もう。えっとね…気温の下がる夕刻まで長居できる 冷房付き施設、我が家から比較的近いのは、コンビニ、ファミレス、 図書館、書店、ゲーセン…くらいだね。 |
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| ゲーセンは却下。 | |
| 別の意味で命に関わるモノね。 | |
| コンビニや書店では着席できないことを考慮すると、ファミレスか 図書館だと思うんだけど…まぁ、ファミレスかな。 |
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| …なに、その、コチラを横目で見ての判断は。 | |
| 私たちがいかにも騒がしくしそうだなってコト!?失礼千万しちゃうわ! | |
| 理解が早くて嬉しいです。ファミレスで決定ね。 | |
| は〜い。 | |
| 所要時間は徒歩で約20分…これだけの時間、耐えられる人? | |
| し〜ん。 | |
| うん、私も無理。よもや太陽の南中が数分前という現時刻、 お肌のためにもそんな試練は避けたい所存です。 |
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| …肌…。 | |
| そんな発想…全くなかった…。 | |
| はぁ…これだから…。 | |
| これだから? | |
| なんでもないです。なので、ときおり中継地点を挟んで休みつつ 目的地に行くのが最良の手段かと思われます。 |
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| ふむ、して、そのルートは? | |
| 我が家とファミレスをほぼ直線で結ぶAルート。中継は1回。30分。 やや回り道で結ぶBルート。中継は2回。50分。 |
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| Aだろ。 | |
| Aよね。 | |
| …いいのね?Aで。 | |
| ……なぜコチラを見る? | |
| …ああ、そうか。直線で我が家とファミレスを繋ぐと…。 | |
| そう、中継地点はゲーセンです。 | |
| 自ら狼の群に飛び込む子羊はいない。Bにしよう。 | |
| じゃ、そう言うことで。 | |
| 後で逢いましょうね、子羊♪ | |
| …は? | |
| だって、Aの方が早いし近いし。 | |
| ゲーセンに行けないのって、つきひちゃんだけじゃない。 私たちはAルートで行くから、ま、その、頑張ってね♪ |
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| ちょ、待て!この臆病者! | |
| 薄情者、だね。 | |
| 善は急げ、じゃね、つきひちゃん。覚悟が出来たらいらっしゃい♪ ちゃんと戸締まりするのよー。 |
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| くぁ…っ! | |
| バタン | |
| …行ってしまった…。 | |
| つきひ姉、来るかな…?まぁ、どっちのルートか知らないけど、来るよね。 | |
| さぁ…?私には分かりかねるわね。 | |
| どうして?いくらなんでもあの部屋に一日中いるなんて…。 | |
| 部屋の温度とか、ルートとか、そう言うことはこの際どうでもいいの。 冒頭の話題、覚えてる?コップに溜まった汗。 |
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| うん、現れないねー、って。 | |
| いま、つきひは、汗を滴らせて、シャツを透けさせて、密室にひとりっきり。 | |
| …あ。 | |
| 私たちは、甘くて冷たいパフェでも頂こうかしらね、かれん。 | |
| うん。…こよみ姉がつきひ姉の立場でなくて、良かったね。 | |
| …ありがとう、今、もの凄く涼しくなったわ。 | |
| ただいまー、つきひ姉、いるー? | |
| 結局来なかったわね…って。どうしたの、ふたり折り重なって倒れて。 もしかして…いたしちゃった? |
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| そそそそそそそうなの!?わ、わ、子供は見ちゃいけない。 | |
| …いや、着衣の乱れがないし、暴行はなかったようね。 つきひ、つきひ…しっかり。 |
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| …あ、船長、やりましたよオイラ…へへ…。 | |
| 何役? | |
| 一つでも忌々しい太陽のヤツが突然もう一つ現れたんで、 ありったけの渾身でストレートを土手っ腹に決めてやりました…! |
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| 太陽に土手っ腹、ね。 | |
| おかげで、もう、力は残ってません…。あとは、頼みます…。ぐふっ。 | |
| つきひ姉、つきひ姉ーー!! | |
| のぼせただけよ。あとで水風呂にでもつっこんでやりなさい。…しかし。 | |
| ………………。 | |
| 太陽にすら間違われるとは、恐るべしデコ。 | |
| 恋路って厳しいんだね…。 |
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