●2005年11月

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……〜ぁき、いも〜………ぉ…。
あら、乙女の浪漫が耳をつんざく。
柔和なのか暴力的なのかはっきりしてくれ。
こよみ姉、やきいも好きだもんねー。冬になると毎日のように。
いや、去年は毎日食べたわよ、実際。
お姉は冬季は薩摩に足を向けて寝ないように。
やぁね、始めっからそんなオイタしてないわよぅ。
むしろ感謝の意を込めて
だからって西郷さんの銅像を部屋に飾るのはどうかと。
いいじゃない、レプリカだし。
謝れ!全国の幕末萌え腐女子に謝れぇ!
なんで?
いや…なんでだろ。
ちょっと、こよみ姉!早くしないと屋台が行っちゃうよ!
そ、そうね!今年初めてのこのウォークライ、見過ごす手はないわ!
…いちいち例えがヴァイオレンスだな。
ちょうど今日の夕飯当番は私だったし、ね!
ね、じゃねえ!晩飯それかよ!
茶碗蒸しにさつまいもを入れるときは焼いておくと風味が一段と…。
あ、私茶碗蒸しに芋は入れない派だから。
み、とぅ。
あうぅ…。
  
すいませーん!おいも下さいー!
わぁらぁ…びぃ〜、も・ち。
かけ声変わってるし!
こんなに涼しいのにわらび餅はいらないよぅ…。
はぁやく、来ないと、行っちゃうよー。
出た!わらび餅屋台特有の傍若無人なフレーズ!
いけ!行ってしまへ!
そんなぁ、お餅より冷たいですぅ、先輩…。
わぁあ!!出た!
と、とつきさん…が、屋台引いてたんだ…。
はい…何しろ、我が家も両親に先立たれ、妹と二人で
生きて行くにはどうしても高校生ながらに労働が…。
…初耳だよ。
こよみ姉、わらび餅買いなよ、ちょっとは応援してあげなよ。
そういう設定にしたら同情が引けるんじゃないかと。
先輩の優しい心につけ込む作戦でして。
勘違いする間もなく自分で明かしたわね。
だって、とおかから親御さんの話とか聞いたこと有るし。
クッ!情報通め!
どういうキャラ立てよ、今日の貴方。
そりゃもう、やきいも屋さんでございますよ、先輩。
…さっき、わらび餅って…。
あれ、でもこの屋台、明らかにやきいもの屋台だよ。
先輩が焼き芋好きだって聞いたから、こうして罠を張って
家の周辺を徘徊していたわけです。
罠かよ。
じゃ、帰りましょうか、ふたりとも。
はーい。
ブツブツ…(先月も登場がなかったのに、またしても…おのれ、三姉妹…)
あーもう、わかった、分かりました!
じゃあおいも屋さん、3人分くださいな!
先輩の母乳3リットルになります。
帰りましょうか。
ちょっと待った!ちょ、ちょっと待った!
今回は心を掴もうと穏和な作戦に出ている私なんです!
このまま何もせずに失敗したら…きっと髪の毛が暴走…。
なにげに脅迫してるわね。
ま、まあいいんじゃない?お芋は普通なんですよね?とつきさん。
そりゃ先輩に心満たして貰うのが今回の主旨ですもの。
北海道で採れたての新じゃがをふんだんに…
ベイクドポテトだよそれは!
他にも、里芋、タロイモ、キャッサバ…。
肝心のサツマイモはないのか。
…やっぱり、帰りましょうか。
あ、ちょっと待って!確か紫色の材料も石の中に放り込んだ
記憶が…!コレ!コレ!
あら、あるの?たまには役に立つじゃない、とつき。
ウミウシ。
キャーーっ!!気持ち悪い気持ち悪い!
つきひ姉軟体系苦手だもんね。しかもこんがり焼けてるし。
というか一緒に焼かれた時点で他のイモも食べたくないわ。
そ、そんなぁ、先輩…。
出直してきなさい。
ちょっと、とつきさん、可哀想かも…。
…いや、どこにも同情の余地はないと思うが。
でも、姉妹二人なのに…家計が…。
だから、ソレ嘘だから。
  
はぁ…ダメだった…。
また?奇妙なこともあるモノだね。
うん…聞きつけておいも屋さんまで辿り着いた頃には
全部のおいもが売り切れ…もう8件目、9件目かな…?
というか、数キロ先の音を聞きつけるお姉ちゃんが尋常じゃないぞ。
この間、とつきの屋台で食べそびれてから敏感になっちゃって…。
何キロも先の音ばかり聞きつけるから、行くまでに時間が掛かって
その間に売り切れちゃうんだよね。もっと近くへ来てくれれば…。
いっしやーっき!いんも〜!!
わぁあ!うるさい!
突然家の前で!大音響で!ウーファスピーカで!
こ、こんな真似をするのは…!
いらっしゃいませ、先輩ー♪
……やっぱり…。
今回はちゃんとおいもって言ったね。
そりゃもう、先輩のお眼鏡にかなうお芋をご馳走しようと、
日々研究を重ねましたから。
ほう…少なくとも、サツマイモは使っているようだ。
どうやったら美味しく焼けるのか、近所のやきいも屋さんを
片っ端から買い占めて研鑽を積みましたのです!
……貴様…貴様が!私のイモをを!
ままままま、こ、こよみ姉!とにかく食べてみようよ!
ほら、今年初めての焼き芋が、目の前に…!
いや、厳密には今年初頭にも食べ続けていたわけだから、
今年初めてというのは語弊があるぞ。
細かいこと突っ込まないで!こ、今年度最初のやきいもだよ〜!
…もう、とりあえず食べてあげますよ…。ほら、寄越しなさいとつき。
母乳3リットルになります。
  
す、すいません!こ、これ試食用です!タダでどうぞ!
…こよみ姉、おいもが関わると眼光が3倍鋭くなるね…。
あら…小振りな割に重量感が…。濃い黄色の中身もふっくらと。
皮の周辺の身だけ微妙に焦がして食感の違いを出す
焼き加減に苦労しました!皮の厚みを熟知しないと!
わぁ…美味しそう…!あの、私たちには…?
母乳3リッ
  
はい、どぞ。
ありがとうございます、とつきさん!
おぉー、確かに美味しそうだ。どれ。
………。
わ、甘い。
む、確かに美味しいな、これは。このレヴェルなら茶碗蒸しに入れても。
……とつき。
は、はい!先輩!…お気に召しませんでしたか?
…正直、見直したわ。貴方が、こんなにおいもを愛していたなんて。
いや、愛してるのはお姉ちゃんだから。
私には尊敬する人が2人いるの。
焼き芋を上手に焼ける人と、青木昆陽よ。
…なんか、今回無茶なキャラがついたな、お姉ちゃん。
貴方を尊敬するわ、とつき。
そして、これからも美味しいお芋を焼いて頂戴。
は、は…はい!嬉しいです、先輩!
これから、毎日屋台を引っ張ってきますね!
冬季はね。
というか、あの大音量の音声はやめて下さいね。
…む、なに、コレ…?
おいもの中心から…糸状の…?イモのヒゲじゃないし…?
毛?
…ま、まさか、あんたの髪…!?魔性の、髪!?
の、飲み込んじゃっ…
あ、違いますよー。私の髪の毛そんなに短くないし、縮れてないし。
そういえば、そうね…。
じゃあ、コレは?何か特別なおイモだから?
いや、ていうか最初から言ってるじゃないですか。
…?
いっしやーっきいんも〜”…って。
…………。
…………。
いん……。
甘かったでしょ?先輩?
帰るわよ、二人とも。
う、うん。
は、初めて食べた…。
ま、まってぇ!みなさぁん!
……うぅ〜、次こそは……。でも、食べて貰えて…ぽ。
  
というかさ、どうやって穀物の中に毛を…?
そこはそれ、また奇妙なまじないで。
もっとそっち方面で攻めた方が手っ取り早いと思うんだけどなぁ。
……不吉な提案をしない、そこ。
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