こんなことしちゃっていいのかなぁ、駄目だよなぁ、なんて思う、頭の片隅で、やっぱ駄目だよなぁ、なんて、多分五分に一度は頭を過るんだけど、やっぱり。

「……山本……?」

 勢いで組み敷いちゃって、俺は腕立て伏せみたいな体勢で、俺の身体の下にいるツナは元々ちっちゃいのにもっとちっちゃくなってちょっと震えてて、目がウルウルしてて、今にも泣き出しそうな顔をしてて、あーもーどうしようみたいな。
 ここで止めるのは変かなぁとか、でもどうしたらいいか分かんないしそれに明日の朝ツナに会ったら何て声をかければいいんだろうとか、よぉとかおはようとかじゃ変だよなぁとか、色んなことをぐるぐる考えていたら、

「……俺は、山本のこと……す、き、だよ……?」

 なんて突拍子もないことをツナが言い出すから俺は余計にどうしたらいいか分かんなくなって、だってそもそも最初はそーゆー如何わしいことをするつもりだったんじゃなくてただじゃれてただけのつもりだったのに、何だか胸のあたりがもやもやしてきて、どうにかしなきゃって思って、勢いでこんな変な体勢になっちゃっただけで。

「……俺、その……こういうの分かんないから、その……」

 俺だって分かんねーよ!って言いたくなったけど、何も言わずに改めてツナを見下ろした。

「悪ぃ」

 何を言ったらいいか分かんなくて、とりあえず口に出してみた。
 ツナは瞳いっぱいに涙を溜めて、ふるふると緩く首を左右に振った。
 そんな顔を見て、俺がパニックになってるってことがバレたらすげー恥ずかしいよなって一瞬我に返った。

「嫌なら、止めるけど」

 パニックになってるのを誤魔化すために、強がってみた。
 そしたらツナはとんでもないことに、

「……山本だったら……いいよ……」

 とか言い出しちゃって、ツナのせいで俺もう後には退けない状態になっちゃったし、っていうかそんな女の子みたいなセリフどこで覚えてきたんだよとか一瞬思ってツナを見ると、今にも泣きそうだけど期待と不安が入り交じったような変な顔で俺を見てて、あーもーこりゃ後には退けないじゃん俺。

「目、閉じて」

 戸惑いながらもゆっくり閉じられる瞳。
 どうしようどうしようどうしよう。
 実はそう思っているなんて、気付かれたら情けない。
 いいのかな、だって俺男だしツナも男だし男同士でキスとか許されるのかな、でも目閉じてなんてカッコつけて言っちゃったからには何かしなきゃな。

 いきなり唇はどうかなと思って、差し当たり額に軽くキスをしてみた。
 ツナは一瞬びくっとして、くすぐったそうにちょっと笑った。
 あ、面白い反応。
 瞼の上にキスをすれば、閉じていた目をさらにぎゅっと瞑る。
 耳にキスをすれば、驚いたのかひゃぁという小さな声が聞こえた。
 もし唇にキスをしたら、どんな反応をするんだろう?
 ただの好奇心で、いよいよ俺はツナの唇にキスをした。
 あ、でも一瞬じゃアレなのかな、という考えが頭を過って、でもずっとキスしてるのもアレかなと思って、時間にして三秒くらい。

 ゆっくり顔を上げると、ツナはゆっくり目を開けて、俺の目を見て照れ臭そうに微笑んだ。
 それを見たら胸のあたりがきゅうんと締まるような感じがして、何かよく分かんないけど堪んないし、何かよく分かんないけど恥ずかしくて多分顔真っ赤になってるしで、照れ隠しと胸のきゅうんをどうにかする意味で、ツナの肩口に顔を埋めてそのままぎゅっと抱きしめた。












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