Ancora credo.3
「誰だ、お前」
黒い帽子に、黒いスーツを着込んだ子供が机裏から出てきた。
大き目の机にすっぽりと隠れてしまえるほど、まだ小さい子供だった。
「こども・・・」
予想外なことに驚き、しばらく反応できないでいると
机の裏からもう一つ顔が出てきた。
ひょこりと覗かせた顔も幼く、金髪に青い目といかにも外国人の容貌である。
猫はどこにいったのだろう?
「あ”ぁ?コレを持ってたアホ面だ」
完全に姿を見せた子供も、全身黒で決め込んだ子供と年は同じ位のように見えた。
アホと言われて思わずカチンときた綱吉だが、外国人というだけで
何故だか言い返すのが怖かった。
猫の事も何だか聞きずらくなってしまった。
(といっても子供じゃないか!)
「はーん。お前がアレ持ってた奴か」
5歳くらいの子供に値踏みするような視線を送られ、綱吉はたじろいだ。
「なっなんだよ」
「・・・・・」
黙り込んだ黒い服の子供の横で、金髪の子供が何かを振り回している──・・・
「俺のお守りっっ!!!!!」
ビッと指差し叫んだ綱吉に驚いたようで、黒ずくめの子供は隣の子供に視線を移した。
「オマモリ・・・?」
不思議そうに呟いた黒ずくめの子供に、手を止めた金髪の子供。
互いに綱吉のお守りを見つめていた。
「何を言ってるんだ?これは封印術の込められたモノだぞ」
「知らなかったのか、コラ」
「ふういん・・・?」
何を言ってるんだ、このガキは。
きっと、ゲームか童話の読みすぎだ。
思いっきり顔に出てたのだろう、金髪の方が「嘘と思ってんじゃねぇぞ、コラ」と睨み付けてきた。
「何だよ・・その封印って?」
教会という神聖なイメージも合ってか、またこの二人の子供の整った容姿もあるせいか、
綱吉はたじろいだまま、当初の取り返すという行動に移せないでいた。
「さあな。中身開けて見ないことにはさっぱりだ」
「あっ、おい。開けるな!」
お守りは開けると効力がなくなるのだ。それを知ってか知らずか、ゴソッとお守りの紐を
解き、中身を取り出そうとする。
「やめろって!」
制止の声も聞かず、近寄った綱吉を金髪の方が黒髪の子供との間に入り
道をふさいだ。
取り出された中身を見て、綱吉は泣きそうな気持ちになると
キッと二人の子供をにらみつけた。
「何なんだよ、お前ら。勝手に人のモノ盗った挙句、お守りの中を開けるなんて
バチあたりも良いとこだっ」
今まで大切にしてきた思い入れのあるお守りを目の前で暴かれてしまった綱吉は、
宝物を捨てられたくらいにひどく落ち込んだ。
「お守りじゃねぇって言っただろ?」
中身の紙を開き、確認する子供。
何だか、年相応ではない。
(何なんだ、本当に)
疑心が募り始めた頃、黒髪の子供が金髪の子供に呼びかけた。
「コロネロ、見ろっ。レアもんだ」
「何だコラ」
コロネロと言うらしい金髪の子供は、中身の紙を覗きこんだ。
「おいっ?」
何だよ?と綱吉は二人に問いかけるが無視された。
(いい加減、腹がたってしかたない)
親の顔が見てみたい、とばかりに足早に二人に近づくと
紙を奪い取ろうとした。
「おいっ!」
「!」
ビリリッ
奪おうとしたはいいが、元は薄い紙だ。
たやすく切れ目の入ってしまった紙に、綱吉は思わず
ヤバイと思ったが、効力の切れてしまった紙だ。
(やっぱり、たったたられる?)
「チッ、バカが」
「お前、どうなっても知らないぞコラっ」
ギッと睨み付けてくる二人に怖気づき、破けた紙を手放した。
(たたられるならコイツらが先だ!)
そう思ったはいいが、やけに睨み付けてくる二人の方が怖い気がしない綱吉は、
じりりと後ろにさがった。
ステンドグラスの柔らかな光を遮り、教会内の明かりをさらう。
暗くなり、上を思わず向いた綱吉に向かって、二つの鋭い声がぶつけられる。
「めんどう事を生じやがって!」
「お前は隠れてろ、コラ」
コロネロからぶつけれたのは声だけではなく、彼らが元いた机まで
綱吉をふっ飛ばす程の鋭い蹴りのおまけつきだった。
「ふべっ!!!」
(何?なに、なになに??)
祟り??
エアーガンだろうか?本物に良く似た銃を取り出した二人を、
遠巻きに見続ける綱吉は、何故か体が起き上がれないほどの疲労を感じた。
(あれ・・・っ??)
体が動かない。体が重い。耐え切れず、コロネロによってふっ飛ばされた地点で身体を伏すが
それでも、視線は入り口の方へと向けた。
「何なの・・・?」
パタリと閉められる入り口のドアの間には、真っ黒い闇の塊がいたように見えた。
「だ・・め・・」
とてつもない疲労感と虚脱感が一斉に綱吉に襲いかかり、綱吉は目を開けているのも
困難な状態になった。
「ね・・む」
バァァァァン────
教会の外で、裂く様な鋭い銃声がした。
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