深々と、、、

深々と、、、

教経が来て初めての雪はとても白かった。
「京では見れなかっただろ?」
「うん、まぁね、、」
「なぁ!雪だるま作ろうぜ!オイラ達でさ」
やたらとはしゃぐ義経を余所に、教経は案外冷めている。
「…もしかしておまえ、雪嫌いとか?」
いきなり心配な面持ちで尋ねる義経を端に、ふっと教経は笑い、
「別に嫌いじゃないけどさ」
とあしらう。
「おまえ、京で雪が降らないとでも思ってるの」
そう付け加えてから、目を細めて微笑んだ。


それから義経は一人、外で雪を相手に軽業をしているようだ。
教経はと言うと。
「『白化粧の纏う頃を刻限とす』か…」
かさりと懐より取り出した書を開き、眉に皺を寄せる。
やがてはここ奥州、何より義経に迷惑が掛かるであろう、その前にー…
「京には雪は降ってるの?」
「…殿、その事ですが、、実は」
教経は驚きと共に怒りが込み上げてきたのだった。
「なんで今頃言うの!?…遅い、遅すぎるよ」
「申し訳御座いませんっ!!ですが、殿があまりにも幸せそうだったもので、、、」
「、、、」

白化粧纏う頃ーーつまり雪が降る頃までを偵察期限とする、降れば即刻都へ帰れとの清盛からの書が届いたのだ。
そして奥州平泉に雪が降り、気温の高い都にはまだ降らないと思いきや、実は今年の都は早めに雪が降ると言う。家臣は、教経があまりにも幸せそうだからと伏せておいた。
教経はその話に怒りを通り越して悲しみが湧き上がった。

「義経、、、」
「…殿、すみませぬ」
「一人にして、、」
教経は兎に角、気持ちを堪えるために部屋へと戻った。




暫くして、義経が雪まみれで帰ってきた。
顔を寒風で凍えさせながら
「ははっ、やっぱり寒いな〜」
何も知らない無邪気な笑顔を浮かべて、教経を探す。
「杏さんー、教経は?」
鍋の良い香りと共に、声が飛んでくる。
「先程お帰りになられましたです」
「えぇ、帰ったの?」
杏は顔を覗かせ
「はいです、お屋敷に帰られましたです。あ、今日はお鍋ですよ」
義経は聞き終わらないうちに、早足で駆け出した。


「殿は、、お会い致しません」
頑なに拒否する家臣達に憤慨し、義経は怒鳴る。
「何でだよ!何で急に、、オイラが何したって言うんだ!!」
流石の家臣達も目を潤ませ、呟いた。
「…何もしておりません、だから殿はお会いにならないのでしょう」
「……どういう…?」
「…実は」


家臣達から一切を聞かされ、義経もまた、驚き悲観した。
「オイラにしてやれることは、、ないのか」
「それは、分かりませんが、、ただ一つ」
「ただ一つ?」
家臣は俯き、
「…教経様には、心許せる友がおりません。出来るなら義経様にそのようなお役目を」
義経の顔に笑顔が戻る。
それはやせ我慢だったのかもしれないが。
「オイラ、元よりそのつもりだよ」
家臣達は、本来の敵に頭を下げる思いだった。



明くる日。
教経は陽向から光を避け、街並みを歩いていた。
ーもう、ここに戻ることはないーー。
そう思った時、後ろからあの聞き慣れた、懐かしい声。
「今日は雪が溶けたな」
はっと気付き、
「何の用」
「用がなきゃ話し掛けて駄目なのかよ、」
義経はひょうきんに笑っている。
人の気も知らないでーー。教経はすたすたと歩き出した。
「雪は凍ると滑るんだよなーくわばらくわばら」
「、、、」
「そういやあの団子屋のおばちゃん元気かな」
「、、、」
「腰痛めて倒れたって聞いたけど」
「、、、」
「思い出すな〜、あの一騎打ち」
「…何がしたいわけ。」
吐き捨てるように呟いた教経に、義経は歯を見せて笑う。
「これ、おまえに」
そう言うと義経の掌には小さな髪飾りがあった。
「おまえ、弓引くとき髪邪魔だろ?これでしばれるからさ」
何故だか、その優しさに腹がたった。
義経が憎いのではなく、自分を縛り付ける家柄でもなく。
ただただ、素直に受け止める事のできない現実と、自分の器の小ささに。そしてこの甘く優しい今が消えてしまう悲しみに、やり切れない思いを感じながら、教経は一切を切ろうとした。
「お前に何の義理があってこんなもの!!」
貰ってしまえば辛くなる。
また会いたくなる。
教経は義経からの、『友情の徴』を叩き落とした。
「もう会いたくない」

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