口八丁手八丁 **Shigen side**


「私が勝ったら、兄さんは私に愛の告白をするのっ!!」
「何だ、そりゃ?」



たまにジュリアの言う事には、どっと疲れが出てしまう。
やれやれと溜息をついてしまうのは仕方がないと思うだろ?
言いたい事は分かる。判ってる。お前が俺を好きな事くらい知っている。
何を望んでいるのかも。
なのに…結果が見えている勝負をこの俺に挑むなど。
…ふっ…ゾーアの魔剣士も舐められたものだよな。
すっかり熱立って勝つつもりでいるジュリアが、何だか意地らしくも可愛らしくもある。
ここは「兄」として負けてやるべきなんだろうか……。


……いや……。


無理矢理言わせて何が愛なんだか。これじゃ本当の事が判らなくなるだろう。
俺はそんな生温い関係は望んでいない。
お前はそれでいいのかもしれないが、俺はそんなもの、この際要らない。
上っ面の優しい愛なんて要らないんだ。
何時だったか、相棒は笑って『さっさと身体から自分の物にしてしまえ』と、冗談めかしてそう言った。
だが俺は笑えない。
今はそれも有りだと、考えているからだ。
判らせる方法はもうこれしかないんだと。
自分の物にしておきたいという衝動が止まらない。

「兄さん」
ジュリアは幼い頃からの変わらない呼び名で俺を呼ぶ。
「兄さん」
違う。
それはお前も俺に望んでいない事だろう?
「兄さん」
自分で言ってて判らないのか?
世間一般論で言うならば「兄」が「妹」に「愛の告白」なんか出来る訳がないだろうが。
だから、お前が「兄さん」って言ってる間は無理なんだ。


木刀で殴りかかってきた女に不意をつかれて、俺は無性に腹が立った。
何だよ、お前!
ジュリアだって、ちっとも俺の気持ちを判ってやしない!
だから手加減などしてやるものか。
結果、ぼこぼこにしてコテンパンに熨してやった。


瞳はこちらを真っ直ぐに睨み据えて、きゅっと口を真一文字に結ぶ。
そして溢れ出す涙を堪え様とするが、それは無駄な努力と終わる。


ジュリアが泣く時はいつもそうだ。
緑の大きな瞳から流れ落ちる大粒の雫が、それはもう面白いくらいにぼたぼたと。
ちょっと我ながら『やりすぎた』とは思ったが。
なぁ…知ってたか?
お前のその表情(かお)…そそるんだ。
一瞬にして釘付けになってしまう自分がそこに居る。
お前をめちゃくちゃにしていいのは俺だけだと、そんな狂った思いが湧き上がる。
ああ…歪んでるよな。俺も。
お前の全てをこの手に掴み取りたくて、とうとうここまで来ちまった。


その涙を止める方法は、結局何時だって俺の方が折れるしかなくて。
しかし、悪かったなんて微塵も思ってない。
悪いのはお前の方だから。


ずっと一緒にいる覚悟があるのなら。
俺をここまで狂わせた責任を取ってもらうからそう思え。






*あとがき*
これはばか漫画と同時進行です。(またか!)
…シゲンがこの時何を考えていたか?という話。っていうか自己完結(苦笑)
シゲンの独白で進む感じですが…書いてる私も訳がわかりません。
シリアスなんだか笑い話なんだか…(-_-;;
うーん…後で書き直すかも(苦笑)
しかし…相手がホームズでも違和感ないよね…(苦笑)<セリフの言い回しに悩みます

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