欠片
時折感じる、敵意剥き出しの視線。 振り返るとその視線の主は慌てて別の方向を見る。 シエラはつい、笑ってしまった。 「どうした?」 隣にいたシゲンがきいてくる。 「あの子よ」 綺麗な赤い髪をした彼の義妹。 彼女がシゲンを好きだということくらい気づいている。 「ジュリアがどうした?」 その名を口にする彼の表情がいつもより柔らかいのはきっと気のせいではない。 昔、妹がいるのだと語ったときの彼の顔を思い出した。 「私とあなたが話しているとこっちを睨んでるの。可愛いったらないわね」 「ああ…ったく、つくづく俺も信用がないな。シエラとはそんなんじゃねえって言ったのに」 口ではそんなことを言っているが、顔は笑っている。 「顔が緩んでるわよ、シゲン」 自分が知っているゾーアの魔剣士とはあまりに違う様子に呆れてしまう。 彼がこんな顔をするなんて思いもしなかった。 「しょうがないだろ、悪い気はしねえからな」 「うれしいって素直に言えばいいでしょう」 「ふっ…」 「何のろけてるのよ」 意外な気はする。 けれど、悪くない。 「ほら、また見てる。…さっさと彼女の所に行ってあげなさい」 「ああ、そうさせてもらう」 近寄ってきたその姿に少女が顔を明るくした。 けれど機嫌は直っていないのか拗ねてみせる彼女をシゲンが宥めている。 見ていて微笑ましい光景だ。 同族であるシゲンは大切な理解者。得がたい友だと思っている。 彼があんな顔を出来る世界があることに感謝する。 それだけで、ガーゼルを飛び出した甲斐があった。 …ここならば、夢をみることができる。 ガーゼルのやり方では何も変わらない。ただ立場が逆転するだけのこと。 本当に望んでいるのは、自分や大切な人達が笑っていられる世界。 怯えながら生きていく人間がいない世界。 そんな夢の欠片が、ここにある。 み、短っ! SSとすらいえない。でもエピソード的には割と気に入ってたり。 いかがですか??? いえ、10分くらいで書き上げた話に感想求めるのも横暴な気もしますが。 私の中での理想的な関係ですね。 別にわたしはシエラさんが嫌いなわけではないのだと。 そう主張しているかのような話です(笑) |