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「いいか、いくぞ」
「せぇのッ」

大柄な永川は見た目通りにパワフルで、前田の上半身を苦もない様子で持ち上げた。山崎も大分疲労してはいたが、残った力を文字通り全て振り絞り、夢中で前田を運んだ。変色しきった不潔な包帯が下水のような異臭を放つ。
なるたけ右脚を揺らさないようにと山崎は気遣ったが、先を行く永川の歩みが思ったよりも随分速い。

「な、もうちょいゆっくりならん?傷に障らんかな」
「良くはないだろうけど。どうせ気絶してるんだ。速いほうがいいと思う」
「……」

足を止めないまま淡々とそう言った永川に対し、山崎は返す言葉を持たなかった。
ただ言葉が出ないだけではなかった、まだ子供らしさの残る柔和な顔立ちとは対照的なその判断に、山崎は圧倒されたのだ。


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