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やがて空の色が夜に変わり、また山あいに入って人家の明かりも疎らになり…、いつしか山崎はウトウトと浅い眠りに入っていた。

――つぎはー、三次。三次です。三次を出ますと八次に止まります…

車内放送にハッと起こされ辺りを見回すと、すっかり日没し寒々しい電灯の下、座席には自分と身を横たえたままの前田の二人だけ…、いや、まさか一眠りしている間に生きているのは自分ひとりになっていやしないかと一瞬、肝を冷やした山崎だったが、最早これさえ幸いというべきだろう、前田にはまだ息がある。
遂に…、ここまで辿り着いた。後は人を捕まえ助けを求めよう。

名を名乗ればそれでいい、とはやはり山崎には信じられなかった。しかし一瞥すれば重傷者だということは誰にもわかる。名など通じずとも救急を呼んでもらえればまずはそれでいいはずだ…。
よっしゃ、と気合を入れ直し、ただ浅い呼吸を繰り返すほか自力ではピクリとも動かない泥の塊を担ごうとすると、山崎は自分の身体がグラリと傾くのを感じた。疲労がだいぶ足にきている。
もう少し。あと少しのはず。

僕が…、頑張らな。


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