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「ばか者。お前が知るか知らんかなど訊いておらんわ。調べをつけろ」
「自分は諜報ではありませんが」
「盗み聞きが得意だろう」
「今は衰えました。お役に立てません」

二岡はきっぱりと言い切った。確かに、風を聴く能力者だから、聞き耳を立てることに関しては常人を超えている。自覚もある。
しかしその実は、常人が想像するほどに使い勝手のいいものではない。アテにされるのは厄介だ。

「そう面倒くさそうな顔をするな。チャンスをやろうじゃないか。うまくやったら空軍に戻してやってもいい」
「はあ」

さらに、渡辺のこの提案も、二岡の耳にはさほど魅力的に響かなかった。
仮に左遷の直後ならば飛びついただろうが、この幾年かの間に彼は歳をとり…、また軍を取り巻く状況も激変してしまった。

「なんだ。そんなに事務が好きか」
「ええと…、好きです」
「ほう。面白い奴だな」

渡辺は底意地悪そうにニヤリと笑った。


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