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椅子の背に巨体を預け、相変わらず忙しく手元を動かす山本のもとに意を決して井端が訪れたのは…、それから20分ほどたった後だった。

「山本大尉。昼食をお持ちしました」
「おお、もうそんな時間ですか」
「遅くなってしまって、申し訳ありません」
「かまいませんよ。私など、誰かに言われなければ寝食忘れてしまいますからね」
「…こちらを」

果たして、井端が差し出したのは…、皿に山盛りされた握り飯だった。昼食時で多忙を極める食堂に直談判して作ったものだ。
軍を代表するような英雄に食わすものではないことは百も承知、しかし定食はやはりリスクが大きすぎた。そんなところで冒険はしたくない。

「ほお」

山本は感嘆のような声を出した。これがどういう意味合いで発せられたのかは、まだ井端にはわからない。

「なにぶん急いで作らせたもので…、こんな粗末なものを大尉にお出しするのは痛恨の極みなのですが」
「いえいえ」

全身で畏まった様子を見せる井端に対し、山本は柔らかい笑顔で応じた。そして、はじめて操作盤から手を離すと、ゆっくりと井端のほうへ体を向けた。


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