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時間が止まり、空気が凍りついた。次に貴哉が動揺した様子で口を開くまで、一体どのくらいの間があったのか。数秒か、数十秒か。

「それは、そうだけど、俺もそう思うけど…、森野さんがそんなこと知るワケ」

ないじゃないか、と彼は続けようとしたが、背後からの声にそれは遮られた。

「院内ではお静かにねー」

ハッとして総員振り返ると、そこには井生が立っていた。口元には笑みをたたえているが、目は笑っていない。

「森野将彦さんですねー、診察室へどうぞ、呼ばれてますよ」
「あっ…、す、すみません」
「早く行かないと飛ばされちゃいますからねー」

井生が作り笑いでそう言うので、森野は返事もそこそこに跳び上がり、そして診察室のドアを叩いた。

「どうぞ」

果たして、中から返事がした。落ち着いた調子の声だ。失礼します、と言ってドアを引くと、中には当然ながら、白衣の医者が座っている。

「森野さんですね。お荷物そちらに置いて、どうぞお掛けください。…スラィリーハント用の予防注射で、永川くんの紹介ですね」


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