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――単にスラィリーを仕留めるだけのことなら、相応の能力者ならばひとりでやれる。しかし、その後の作業や単独行動のリスクを考えると、信頼のおける仲間でチームを組むのが望ましい。
その常識を外すことなく、永川、梅津、林の3人はたいてい行動を共にしていた。永川は言わずもがな、他の二人もそれぞれスラィリー1頭と互角以上に戦える力があるが、彼らは決してそれをしない。最低でも2人が揃った状態でハントに臨んでいた。
危急の事態に際して永川がひとりで対応したことは過去に数回あったが、それもあくまで例外的なケースだ。

そもそも、彼らがどれだけ図抜けた存在かということは、このあたりでスラィリーハントを生業にする者なら誰でも知っている。

圧倒的な地力をもつうえにスラィリーに特化された必殺の秘術を知る永川を別にすれば、このあたりでスラィリーを狩ることを目的にした場合、梅津は突出した破壊力をもつ存在であった。
彼は永川のように自分自身の腹に大量の気を溜めておけるわけではないが、ある珍しい能力を持っているのだ。
俗に『潜水艦』と呼ばれるそれは、練った気の塊を足元の地面に叩き込み、土中を通して目標の真下で暴発させる荒技で、成否は生まれ持った気質体質に大きく左右されるらしく、術者はごく限られる。
幕張にいるとかいう縁者のツテで梅津が実際に体得してくるまでは、能力者が多くいるスラィリーハンターの間でも、幻といわれていたほどだ。そして今でも広島には、おそらく彼をおいて他に使い手がない。

この能力の真髄は、単に離れた目標の足元を掬えるというだけではない。たとえ本人の発した気の塊は小さくとも、目標にぶつかるまでの間に土中に偏在する気を巻き込んで、実力をはるかに超える分の気を目標にぶつけることができるという点にある。
つまり、土地の性質によっては、短い距離の間にも、南洋を進む台風のごとく何倍にも威力が増していくことさえあるのだ。条件さえ整えば、一撃の破壊力は梵や永川と比肩するほどにもなる。
そして、スラィリーの跋扈する三次の山中は、昔から霊場として知られているとおり、清濁を問わず高密度の気が充満している。


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