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「俺はアレックス・オチョア。自衛隊で指揮官をしている」
「……」

返事がないので、アレックスはさらに自ら名乗った。しかし…、梵は依然として固く口を閉ざしたまま、錫杖を衝き、身体の回りを巡る気をピンと張っている。
気の使い手でないアレックスにも、その気配が伝わってくる。背後に控えるスラィリーも、じっとこちらを睨んでいる。
何千本の針のような、最大限の警戒を向けられているのをアレックスは肌で感じた…、しかし同時に、好材料にも気が付いた。
梵はこちらに注意を向けている。つまり、投げかけられた言葉に耳を閉ざしてはいないのだ。対話の余地がある。かもしれない。

「自衛隊はお前と敵対するつもりはない。この広島の独立…、ユーノウ、独立戦争の足掛かりとするため、ここに基地が欲しいんだ。他に何も望まない、どうか、それを見逃してくれ」

直立、不動、両手を開いて肩の高さに挙げたまま、アレックスはまた言葉を投げた。この提案を吟味しているのか、それともやはり無言を貫くつもりか、梵はじっと黙っていた…、
そして数秒ののち、突然、口を開いて言った。

「山へ近づくな」

返答は否。一切の妥協がなく、しかも、その理由の一片すら窺わせない。


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