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「キシモト!」
「た、隊長…、」
木々の折れる音がここまで響いていたのだろう。岸本の到着とほぼ同時に、アレックスが駆け寄って出迎えた。
「何があった。スラィリーか」
数回、荒い呼吸をして、それでも息の整わないまま、岸本はアレックスの問いに答える。
「マ…、マスターです!」
「なに…、」
アレックスは一瞬、驚いた顔を見せた。というのは、これを単独行動のスラィリーの仕業、つまり事故の類と踏んでいたからだ。
すぐそばで大規模に展開している本隊を捨て置き、少人数の見張りをいきなり攻撃するとはマスターらしくない…、
しかし、岸本がそう言うのだ。疑っていては始まらない。そのための見張りだ、無駄にしてはならない、躊躇している暇はない!
「撤収!撤収だー!!」
アレックスは持てる限りの大声を出した。そして間もなく運ばれてきた担架に木村が乗せられるのを見届けると、岸本の肩をぽんと叩いた。
「ご苦労だった。君は、怪我は」
「…ありません」
「よし、それなら急いで撤収しろ。遅れるな」
「は、はい!」
岸本は頭を下げると、撤収する本隊とともにまた走り出した。アレックス隊は何度もこういった事態に直面しているので、スラィリーマスターの出現、それに伴う撤収自体には慣れている。
普段より人員が多いとはいえ…、それほど時間はかからない。
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