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幹英、と名指しされたその男は、頬をポリポリと掻きながら、少しバツが悪そうにそう答えた。彼には小林という姓があるが、ごくありふれていて紛らわしいため、こうしていつもファーストネームで呼ばれている。
彼もアレックスと同様に、ブラウンが最も信頼を置く部下のひとりだ。そして、現在ブラウンが自分の直属にしているメンバーの中では唯一、広島自衛隊の叩き上げである。
つまり実戦経験は皆無に等しいが、彼は頭が切れて弁が立ち、そして何よりも気が強い。
これらの長所が高く評価され、彼は参謀としてブラウンに重用されている訳であるが…、その気の強さが災いして、興奮するとまくし立てるように喋る癖があるため、どうしても口が滑りやすい。
その幹英がまた余計なことを進言したに違いない、アレックスはそう確信した。

「可能性があると言ったんだな」
「そんな顔するなよ。可能性があるのは本当だ」

幹英は幹英で、実際口を滑らしたという自覚があるものだから、こう言われてしまうとどうにも歯切れが悪い。
しかし彼も広島自衛隊のブレインとして、ひとつの重要そうな事実らしいものを掴んだという手応えは感じている。


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