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――数分後、井端の司令室。応接用のテーブルの上に並べられた多摩川下流域の航空写真を囲んで、まず李が口を開いた。
「報告から行おう。とりあえず最後まで聞いてくれ。現場は…、この辺りだ」
李は畳んだ扇子を使い、写真上の一点を指す。それを見て井端、荒木は黙ったまま頷く。
「輸送車両が2台、積荷は不明だが、その積荷ごと全焼。死亡者の正確な数はわからないが、全滅ということだけはわかっている。
情報元はうちの諜報だ。二つの異なる情報筋からほぼ同様の情報が得られているそうだから、大きな間違いはなかろう。以上だ」
「ふむ…、有難う。そうだな、まずは、場所が気になるな…」
井端はソファから体を起こし、李が指していた箇所を中指の爪でコツコツと叩いた。
「やはりか」
「基地が近すぎる」
報告によれば積荷は奪われていないのだから、略奪を目的とした場当たり的な犯行ではない。とすればこれは、ある程度の力をもった組織が関与して計画的に行われた『作戦』であろう。
そして、その組織は、輸送車両の動きを事前に把握していたはずだ。そうでなければ襲撃はできない。
「なぜ、もっと早くに…、ここまで川崎基地へ近づく前に襲撃が行われなかったのか。川沿いのほぼ一本道なんだから、やろうと思えばもっと手前でやれるはずだ」
「…そうだな。私も同感だ。ちなみに、これには写ってないが…、現場には高架橋があるらしい」
「この写真は古いからな」
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