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「今、ちょっと大事な局面に入ってますのでね、このままで失礼いたしますが。自分は岩瀬少将の命にて、微力ながらお手伝いに参りました、山本昌広と申します」
「!!」

その名を聞いた途端に井端の表情が変わった、しかし、それは数十台のモニタを同時にチェックする山本の視界には当然、入らなかった。替わりにその様子に気づいた李が、怪訝そうな顔をして口を開く。

「どうしたんだ」
「どうもこうも…、なあ荒木…、」
「きっ、気前がいいというか、なんというか。いきなりエースを寄越しましたね」
「そうか、ビョンさんはここへ来ていくらも経たないから、知らないんだ。名古屋防衛軍にその人ありと言われた撃墜王」
「しかも、ご自身は大した怪我をしたこともないとか」
「何だと、そんな大物が…」
「…昔の話ですよ」

驚きのあまり声の大きくなったヒソヒソ話に対し、山本は照れ笑いを浮かべながら応える。

この山本なる中年男、ひと昔前には名古屋防衛軍西基地の誇る無敵のエースパイロットだった。来る日も来る日も戦闘機に乗り、贈られた褒章は数知れず、
しかし現場を離れることを嫌い、司令官への昇進を頑なに拒否し続け、結果、未だに大尉の階級に留まるという男だ。

「今はもう、年をとりましてね、戦闘機には乗れないので。こうして無人機の操作をね。こちらの操作システムがうちのと同じで助かりましたよ」

そう言いながら山本はモニタに忙しく目をやっているが、手元には一切視線を落とさない。まるで操作盤までが自分の身体の一部として意のままに動いているかのようだ。
そしてモニタに映し出される映像の中で…、向かいから編隊を組んで飛来する最新鋭の無人機が、次々と撃墜されてゆく。


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