373
――丁度そのころ、西基地では。
「いやあー、案外普通の人だったねー」
「そうッスね」
死神とも称される西基地総司令・岩瀬仁紀少将と、その副官たる川上憲伸中佐の二人が、先刻尋ねてきた男を評していた。
「憲ちゃんが『般若』なんていうから、一体どんなのが来るのかと思って身構えちゃったけど」
「だって、実際そういう噂なんスよ」
「別に普通に礼儀正しいし、言ってることもまともだし。なんで般若って言われてるのかな」
「まあ、わからないスけど、自分が思うに、恐らく…」
そこまで言って、川上は一旦言葉を切る。しかし岩瀬が目線で先を促すと、渋るように、こう続けた。
「顔…、じゃないッスかね」
それを聞いた岩瀬は突然パッと笑顔になり、ポンとひとつ手を叩いた。
「あ、やっぱりそう思う?」
「思うッス」
[NEXT]
[TOP]
[BACK]