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☆ ☆ ☆

――闇の向こうから、靴音が迫る。逃げても、逃げても、追ってくる。
振り向くと、奴は真後ろに…、有無を言わさず狼のように飛び掛ってくる、背中が地面へ打ちつけられる。必死になって振り解こうにも、体格は絶望的に違う、重い身体がのしかかる…、駄目だ、逃れられない。
物言わぬ暗い瞳が、失望に満ちた色をして目の前に迫ってくる。そして奴は、右手の指に挟んだ護符を俺の喉笛に押し付け、抑揚のない声で真言を詠唱する…、
耳をつんざく爆発音とともに、びくん、と自分の身体が勝手に跳ねるのがわかる。俺は、俺はたったいま、殺されたのか――!?

「うわあああッ!!」

スラィリーマスター、こと梵英心は、またお決まりの夢を見て、寝床の上に大きく跳ねた。その衝撃に彼の寝床…、すなわち一頭の巨大なスラィリーは眠りの世界から引きずり出され…、
二、三度まばたきをして、それからやがて身を起こした。

「…エィ、シン」

その腕に抱いた、己に比べればなんと小さな身体の名を、スラィリーは呼んだ。返事はない。
かわりに…、

「カ、ツ、ヒ、ロ…、」


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