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かくして俺達最初の一歩は脱獄劇から始まった。最初の一歩で、既に数百人を焼き殺したのだ。さしもの大沼も、最早、後には引けなかった。
そして、その後の道は言うまでもない。それこそ目的のためには、奪えるものは何でも奪った。人は数え切れないほど殺した…。
☆ ☆ ☆
「わざわざ見せてやるほどの道か。死体の山で埋め尽くされて、足の踏み場もない。見ないで済むならそれがいい」
「だから、それじゃ駄目なんだ。あいつは今後の俺達がどうなっていくかにしか興味がない。実際あいつには関係のないことかもしれない、でも、俺達が…、俺とお前が歩いてきた過去は消えないんだ。
あの時お前は言っただろ、ひとりも殺さず政府が倒せるかってな。その通りなんだ。都市をひとつ背負っていくんだ、綺麗事だけでは済まない」
「それは貴様が忘れず把握していればいいことだ。力者には」
関係ない、と言おうとした帆足を制して、大沼は続ける。
「帆、これはお前には言っておこうと、しばらく前から思ってたんだが」
「何だ」
「いずれ、俺達が所沢政府として他所に認められる日が来たら…、」
刺すような視線を向けてくる帆足の目を大沼は改めてしっかりと見据えた。そして。
「そのとき、俺は力者に総帥の座を譲りたいんだ」
「…何だと!?」
まさに青天の霹靂。大沼のその言葉に、帆足は飛び上がるほどに驚いた。
「待て、それ以前に、貴様が降りる理由がどこにあるんだ!」
「いいから聞いてくれ。俺もお前も移民の子だ。地元の有力者から見れば、どこの馬の骨ともわからんわけで…、何をやっても、到底信頼は得られないんだよ」
「俺はともかく、貴様は違うだろう」
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