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英心の失踪以来、他人を気安く友と呼ばなくなって久しい彼だが…、きっとよき友を得たのだろう。少なくとも倉の目にはそのように見える。
それ自体は喜ばしいことだ、しかし…、

あの二人はなにゆえ、ここへ集ったか。
あらためて自分自身に問うまでもない。倉は運命を嘆かずにいられなかった。
事と次第によっては、あるいは、勝浩自身にとっても兄弟以上の存在であったはずの英心の、命を……。

「アニぃ、泣いてんのか」

不意に、マサユキが声をかけた。いつの間に横に立っていたのだろう、振り向いた倉の目をじっと見つめるその顔は、何の表情も浮かべていない。

「ん、泣いてないよ」
「そうかよ」

マサユキを不安がらせるまいとして、倉は笑顔をつくった。その笑顔がマサユキの目先をごまかすための役に立ちはしないことを倉は知っていたが、そうすることしかできないのだ。
そして、それを察したか、マサユキもそれ以上の追及をしなかった。

しかし。

その笑いも泣きもしない表情のまま、マサユキは左の目から…、
突然、ボロリと涙をこぼした。

「あっ、どうしたんだ」

倉は驚いて、マサユキの両肩に手をやった。間を置かず、今度は右目からも大粒の涙が溢れる。
頬を拭うこともせず、マサユキは縋るように倉の顔を見つめた。その見開かれた瞳には戸惑いの色が…、人並みの凡庸な感性しか持たない倉の目にもありありと見て取れるほどに、色濃く映し出されている。
その様子を見るに、その涙の意味が理解できず、それどころかその涙自体も、恐らくは自身の意思に関係なく、突然、溢れ出たのだろう。
それが信じられないとでも言いたげな顔で、それでも彼は懸命に、自分の言葉を語るべく、たどたどしくも、健気に、鼻声を出した…、

「…アニぃが悲しいから」

ああ…、なんと、なんということか…!!


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