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「帆者!」
岸の制止も聞かず、帆足は剣を振り上げた。
またやりやがった!小野寺も岸もそう覚悟した…、次には女の首が飛んで、赤い血しぶきが上がるだろう、
…その予測を裏切って突然、バーンという音が鳴り響き、黒いプラスチック塊が真二つに割れた。
「よ、良かったんですか」
「何だかわからん以上は、壊すしかない。総帥は俺らに何つった?」
「…輸送部隊を襲撃しろ、と」
「そうだ。積荷を回収して来いとは言ってない。だからこれでいい。行くぞ。撤収だ」
そう言うと、帆足は女に目もくれることなく、コンテナの外へ出た。岸、それに小野寺が安堵の息をつきながら顔を見合わせ、それに続く。
「迎えは?どこで合流だっけか」
「…ここの道を少し上り方面行って、左へ曲がってしばらく行ったあたりだ。…もう来ているだろう」
「そうか」
小野寺の答えに軽く返事をし、帆足は歩き出した。しかし、数歩歩くと、何かを思い出したように足を止めた。
「どうか、したのか」
「力者。お前、手榴弾持ってるか。持ってるよな。俺達幹部ともあろうもんが」
「…そりゃ、持ってるが」
「へぇ、案外しっかりしてんじゃねぇか」
解放戦線は総帥以下、炎の神アワハラを信仰する集団であるから…、生身の身体から爆発を起こせる総帥に倣い、どこでも爆発が起こせるよう、幹部はみな手榴弾を常に携帯している。
「あんた持ってないのか。俺達幹部ともあろうもんが」
「持ってねーよ。俺は別にナントカの神の世話になっちゃねぇからな」
「不信心だな」
「んなこと言って、お前本当はどうなんだ。普段実戦に出ねぇからって、忘れて来てたり」
「まさか、そんな事」
「なら、見せてみろよ」
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