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…小野寺は言葉を失った。岸もただ呆然としている。
他の数名はと言えば、今は小野寺配下とはいえ、いずれも解放戦線の兵士であるから…、戦闘に参加したこともあれば、人を殺めたこともあるだろう。そもそも小野寺本人でさえ、戦闘経験は、少ないにしろ皆無ではない。
そういった人間が集まっているにも関わらず…、今、この場の誰もが戦慄した。それが何よりの証拠だ、帆足のやり方は常軌を逸している。
しかし岸は今日が実質的に初仕事である、これが俺達・解放戦線のやり方と誤解されやしないか、そのことが小野寺は気懸かりだった。

「ボサっとしてんな。積荷を確かめるぞ」
「あ、は、はい」
「力者、女を尋問しろ」

帆足に呼ばれ、岸は駆け足で輸送車の後ろへ回る。さらに帆足は小野寺に向かって命令し、三歩ほど岸の向かったほうへ歩き出したのち、思い出したように足を止めた。

「なにを聞くかはわかってんだろうな?」
「……」

小馬鹿にしたようなその言葉に、小野寺は微かに歯軋りする。

「聞こえねぇのか」
「…積荷は、何なのか」
「わかってんならいい。多少のことはしてもいいから、口を割らせろ」

それだけ言うと、帆足は岸の後を追い、輸送車の背後へと回った。小野寺は知らずのうち顔を歪め、その背中を睨みつけた…、
…なぜ、総帥は、あの男を傍に置くんだ!!

そもそも、帆足は解放戦線の内部においても、昔から賛否のはっきり分かれる人物だ。理由は今更挙げるまでもない、この小一時間の行いだけを見ても、誰しも理解するだろう。
総帥同様に人智を超えた能力をもち、戦闘能力は圧倒的だが…、反面、粗暴で気が短く、人使いも荒く、さらには、人命を紙とも思わない。


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