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バチン、という衝撃が、突然、森野の腕に走った。いや、衝撃が走ったなどという暢気なものではない。
腕が内側から破裂したかと思うほどの、電気ショックとも火傷とも違う、強烈な痛みを伴った強い振動が森野を襲った。
…いや、正確には振動などしていない、なぜなら森野は、自分の腕から目を離さず見ていたのだ。
そこで起こった出来事は、永川が指先で少し強く、腕の皮膚を、少しへこむ程度に押しただけ。他には本当に何もなかった。
「な、何だ、今のは」
「人間の身体を巡る気には、血管と同じように、決まった道筋があってな。ルートに個人差はあるが、だいたい神経系に沿って体内を循環している」
永川は質問に答えず、何かを探るように指をずらすと、少し間を置いて、そこを押した。
森野はまた衝撃を感じたが、今度はぐっと耐えた。軍人たるもの何度も悲鳴を上げるわけにはいかない。
「せっかく力があっても、その気脈が細いと、一度に多くの気を流すことができない。今のお前は、そういう状態だ」
「……」
淡々と永川は喋り続けるが、森野にはとても相槌をうつ余裕がない。脂汗が額を伝う。次に来る衝撃に備え、歯を食いしばるだけで精一杯だ。
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