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仲間の仇となったスラィリーをしかと仕留め、九死に一生を得て生還した英雄は、一転して殺人未遂の容疑者となった。
当然、残る二人も事故死ではなく殺害された可能性が浮上、余罪を追及すべく警察は男を病院から拘置所へ移した…、
しかし、ここまでだった。
本格的な取調べが始まった翌日。看守が目を離した隙に、男は首を吊って死んでしまったのである。

後にはスラィリーの巣穴から保護された男だけが残された。傷は順調に回復したものの、はじめ一時の錯乱かと思われた精神状態は一向に回復の兆しを見せず…、おまえは誰かと問われても、要領を得た答えができない。
ただひとつわかったのは、ハンター協会の台帳に残されていた名前だった。長谷川昌幸と記入があった、少なくとも協会を訪れた時点で、自分の名前を漢字で記入する能力を有していたことは確かだ。
しかし現住所欄には、ただ茨城とだけ書かれていた。正確な記入が面倒だったのか、あるいは元々、住所欄に書けるような定まった住所を持たないのか…、いずれにせよ、これでは探しようもない。
それでも、その地名をもつ地域の大半を支配下に置く幕張に対し一応の問い合わせが行われたが、返ってきたのはただ、同名の捜索願は出されていないという回答だけだった。あとは茫洋として手掛かりはなく、捜査は必然的に打ち切られた。

心身に傷を負い、異郷にただ一人、おぼろげな存在となって世の波間を漂う彼の噂が倉の耳に入ったのは、ちょうどこの頃のことだった。


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