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「そうか、ここが…」

スラィリー折伏術の総本山。永川が幼少時に修業した場所。そして…、スラィリーマスターと呼ばれる男の生家。
ここに一体何があるのだろう。永川は何のために、自分をここへ連れてきたのか…、森野は腕組みをして、フームと唸った。

「感慨にふけってる暇はないぞ。話は後だ。とにかく、入ろう」

そう言って永川は正面玄関の戸を引いた。温かみのあるドアベルの音がカランカランと鳴り響く。

「御免くださいよ、っと…」
「この時間なのに、施錠をしていないんだな」
「そうだな」
「防犯上、問題あるのでは」
「そりゃ、あるさ。でもここは文字通りの駆け込み寺だからな。住職がそういう考えなんだ。ほれ、スリッパ」
「ああ、すまない」

住職、ということは…、スラィリーマスターの父親だろうか。
自分の身の安全よりも、夜中に助けを求めて来るかもしれない誰かのために門戸を開放しているとは、見上げたものだ。
ペシ、という音をたてて足元へ投げられたスリッパを履き、靴を隅へ寄せながら、森野はそんなことを考えた。


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