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――過日、名古屋へ来たばかりの李に落合は言った。

将来的に、基地を任せたいと考えている人材がいる。
それに足りるかどうかを実践で見極めたいが、今は精々、部隊指揮くらいしか経験のない男だ、いきなりやらせても失敗するに決まっている。よってお前に補佐を頼みたい。
あいつの意思を尊重しつつ、しかしオレがあいつをクビにしてしまわないように、外部からの冷静な視点でうまく誘導するのがお前の仕事だ、不適と思えばいつでも言え、と。

…まさか、それをこんな形で遂行することになるとは。さすがの長官もお考えにならなかっただろう。
私が命令されたのは中立な立場からの冷静な誘導。ただそれだけだ。然るに、迷っている井端を説得して背中を押すなど、越権行為も甚だしい。
しかし今は、この才気ある男の情熱をここで摘んでしまうことが、たまらなく惜しく感じられて仕方がない。
井端を監督する立場にありながらその影響を受け、井端が森野にしていることを、私もそのままなぞっている。
私を高く評価し、そして招聘してくれた長官に対する裏切りと思えば心苦しい…、しかし、長官、私は井端が不適とは思いません。

加熱した頭でそんなことをひとしきり考えたのち、はっと冷静になって、李はスゥと息を吸い込み、そして鼻から長く吐いた。
そして井端にわからないよう微かに、自らに対し、失笑した。


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