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喋りながら、洗った手を拭き、山崎はフゥと一息ついた。そして土鍋に目をやると、怪訝な顔をして永川に尋ねた。

「その鍋、何」
「飯だよ」
「そこに飯炊き釜あるやんか」
「足りないんだよ、前あった大きい奴どうしたんだ」
「落として壊した、でもこれイイ奴なんやで、新しいし、飯がふっくら炊けるねん、つこたらええのに」
「いい奴わかったけど、量が足りないって言ってるだろ、話聞けよ」
「二度に分けたらええやん」
「時間が倍かかるだろ。先に炊いたほう冷めるし」
「そんなもん保温にしといたらええんちゃうん」
「待て、その理論は破綻してる、飯1を炊いたあと、飯2を炊いてる間、飯1を同じ釜で保温することはできない」
「なんでもええけど、噴きこぼれとるで!」
「こんなもんだ、泣いてもフタ取るなって言うだろ、うちでもそうしてるし」
「そうなんか…」

永川がそう言うので、納得のいったようないかないような顔で山崎は首をかしげた…、その直後、
鍋の沸騰が急に勢いを増し、米粒を噴出するほどにあふれ出した!

「ちょ、あかん、泣きすぎや」
「ほんとだ、やべ」
「火ぃ強いがな!最強になっとるやんか、そんな強くせんでもええねん!」

永川がフタを持ち上げる間に、山崎が手元の操作盤のボタンを押し、ピ、ピ、と二度電子音を鳴らした。
暴れていた鍋が急に大人しくなり、やがて噴きこぼれた米の焦げる匂いが漂う。


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