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「俺のとこに名古屋から来てる客のことだ。命の保障はできない、本人もそれでいいと言ってるが、本当にいいのかどうか。
 勿論俺も最善を尽くすが…、このへんが曖昧なまま実際に万一のことがあると後々面倒だろうから、」
「ちょっと待て」

さも周知のようにつらつらと喋る永川を、青木があわてて遮った。

「客?名古屋から?…俺には聞こえてきてないぜ?」
「あれ、聞いてないのか」
「何も。だから話がわからない。順を追って説明してくれ」
「ん……、ということは、どういうことなんだ…?」

永川は自問しながら視線を宙へ漂わし、あごひげを撫ではじめた。その様子から見るに、説明してくれ、という言葉はおそらく耳に入っていない。
人に話しかけておきながら、重要なポイントに差し掛かると自分の世界へ入ってしまうというのは、この男には珍しいことではないと青木は知っているが…、このままではラチがあかない。順に説明してくれないのなら、順に質問するまでだ。

「客って何者だ。俺に聞くってことは、軍人なのか」
「そう名乗ってる」

このあたりの人間関係において新参であるところの青木は知るべくもないことだが、実は彼をスカウトしたマーティ・ブラウンは、前田の古い友人である。
一体どういう友人なのかは永川も詳しく知らないが、ともかく、前田は自ら積極的には動かないにしろ、ブラウンの要請があれば基本的に協力を惜しまない姿勢である。
よって望む望まざるに関係なく、前田を立てようとすれば、永川も必然的に自衛隊と関係を持つことになり、
誠に不本意ながら、青木を通じて表向き――あくまで表向きの話であり、実態としては何もしていないが――、広島自衛隊に協力していることになっている。
加えて、現在の名古屋と広島の関係は、特別に良くもないが、さりとて悪くもない。


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