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「どんな苦労して仕留めようとブツの市場価値が低かったらそれまでだ。そういう商売だってことはわかり切ってるだろうに、交渉の時になってそんな事言い出すもんじゃないね」
「なんだ、お前じゃなきゃダメだとか言ってわざわざ呼び出しといて、使うだけ使ったらそれか。冷たい野郎だな。儲からない仕事だってわかってながらこっちゃイヤな顔もせずに駆けつけてやったってのに…」
「あーあー、そうねそうね、そういえばそうだったね。じゃあ御指名料はずんどくから次もよろしくね。
 でも普通指名料って客が払うもんだよね、店から嬢に指名料払うとか聞いたことないけど、キミくらいのカリスマを囲っとこうとするならこのくらい当然っていう事なのね。すごいねー」
「嬢でも姫でも、なんとでも言え、あんたは金さえ出してくれりゃいい。で、なんぼ上げてくれるって。はずむっていうからにはドーンとはずんでくれるんだよな、おじさま太っ腹ー」
「誰がおじさまだ。太っ腹て。嫌味かよ。…30万!これ以上はビタ一文出さんからな」

青木は指を三本立て、声を荒げて言った。こちらも鼻の頭に皺を寄せて歯を剥いており、その形相は永川にも決して負けない。

「全然はずんでないな。上積み3万じゃないかよ」
「バカ言え。指名料なんだから、こんなもんだろ。こっちだってきちんと検査にまわしたうえで査定してるんだ。今回の獲物にはこれ以上出せない。
 これでもキミの腕前を考えて他のハンターより随分高くしてある、経費を考えればこれでギリギリだ。これは自信を持って言うがな、他所のブローカーじゃ絶対にこの額は出ないぞ」

その青木の毅然とした発言ののち、数秒のあいだ睨み合いが続き、沈黙が場を支配した。
これでギリギリとはだいぶ大袈裟な表現で、実際はまだ余裕だろう、と永川は踏んだが…、その一方で、提示された金額は確かに、猟師の分け前の相場からいえば、破格であることもわかっている。
その上で僅少とはいえ上積みを引き出したのだから、今日のところはこのあたりで手を打っておくべきか。


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