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「…それで、気を体外に放出する類のことは一切教えてあげないんですね。何でなのか今まで気になってたんです」
「体に溜めとる気の量がどうかなんちゅう事は普通は外からは見てもわからんからの、そう思うのも無理はないわ。
 英心も決して多い方ではなかったがのぉ…、そんでも、浩司も見所はたくさんあるけぇ、英心くらい、いや、せめて人並みにあれば…、色々教えられることもあるんじゃが…」
「…数字的に言うと?どのくらいなんです?」
「そうじゃの…、なんも修業しとらん、フツーの大人を10とすると…、
 ここを出てった時の英心が13、今のナーが…少なく見ても30、浩司は……、うーん…、5、6くらいかの…」
「うわ、そんなに…」
「そうなんよ。これを一言で言うんなら、つまり、素質がない、ちゅうことなんじゃろが…」
「でもあの子、反射神経というか、瞬発力というか…、とにかく跳びまわることだけは天才でしょ、あれはなんとか活かしたいですよね」
「じゃけぇ苦労しとるんじゃ。それが無かったら、ワシもとっくに諦めとる。いや、むしろ、早く諦めるべきだったんかも知れんよ」
「そんな」
「じゃが、あの子に会うた時は、ワシもまだ若くての…」

前田は自嘲気味に、しかしどこか懐かしそうに笑って、深く息を吐くと、茶の残りを飲み干した。
山崎は甘やかされている…、これは永川が声高に主張する事実であり、前田にも山崎自身にもその自覚はある。
しかし、仮に永川同様厳しく育てたところで、所詮山崎は永川の領域には追いつかないことを前田は知っているのである。
それに対して、――前田は誰がどの程度の素質を持っていて、将来的にどの程度の力を持つと考えられるかを弟子に伝えたことは一度もないから――、
永川はただ自分自身が確かに血の滲むような思いをして強くなったという、ただそれだけのことしか、知らないのだ。


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