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手伝ってくれとは言われたものの、軍では大尉という肩書きを持ち、妻子も持つ森野はその実、ほとんど料理をしたことがない。
そのことを伝えるべきか、それも高慢だろうか、できるだけのことをすべきか迷って森野はおろおろしたが、
対照的に永川は実に手際よく、米を火にかけ野菜をきざんで鍋に味噌を溶き、またたく間に食事の支度を進めていくので、
結局森野がした手伝いは、「これ持ってて」と「鍋見てて」の2点のみにとどまった。
それを森野は申し訳ないと思ったが、永川は一向に気にする様子もない。
「やあ、手伝ってもらったから早くできた。さ、食べよう。いただきます」
「…いただきます」
そういえば、食事の前に合掌し、いただきますと唱えたのはいつ以来だろうかと森野はしばし感慨にふけった。
「俺の適当な味付けだから、口にあうかはわからないが」
「いや、うまい、うまいよ、こいつもうまいと言ってる」
森野はその食事を本当にうまいと思った、が、横に座ったドアラがゴチャゴチャと、味噌汁が赤味噌でないことに文句を言っているなどとは無論、訳して伝えるわけにはいかなかった。


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