007

「事情、というのは」
恐らくはコタツとして生産されたのであろう形状の、今は単なるテーブルの上に茶を置きながら、まず永川が口を開いた。
「…何から話したらいいか…。単刀直入に言うと、まとまった金が必要なんだ」
「そんなことはわかる。ただ猟がしたいだけなら、鹿でも撃てばいいことだろ」
森野の答えに、永川は表情を動かさずそう言った。その返事を聞いて森野は内心、こいつは話が早いと喜ぶと同時に、
少しだけ不快な気分になった。
つまり、この永川という男は、いかに凶暴なスラィリーといえど命のあるものを、金のために余分に殺めることに対し、なんとも思っていないのだ。
それを腹立たしく思うのは、おそらく自分がドアラマスターであるための性で、
スラィリーに対し猟師という立場でしかない永川にそれを求めることは筋違いだ…、そもそも自分はこれから、
その猟師の仲間入りをしなければならないのだ。
同じ生き物といえど、愛するドアラたちを撃つわけではない、なにも問題はない、
名古屋を出る前に散々自問し、そして辿りついた歪んだ答えを、森野は今一度、強く念じ、それから次の言葉を繋いだ。
「…ビッグ・ドメ…、というのを知っているか?」


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