「あっち!」 「うお。びっくりした。」 シャマルが飯ができたというので きちんとテーブルに座って、いただきますと挨拶もちゃんとした。 そして初めに、と思って大根と油揚げの味噌汁を啜ったら。 「う゛ー。」 ものすごい熱かった。舌に接触した油揚げもとことん熱くなっていた。 火傷したらしくひりひりとして感覚があまりない。 シャマルはびっくりしたという割に普通に米粒を口に運んでいた。 なんでこんな熱くすんだよ、という恨みをこめて じっとシャマルを見つめると黙って立つ。 台所で冷蔵庫が開けられる音がしたと思ったら、 帰ってきたシャマルに「ほらよ」と氷が入った麦茶を渡された。 からん、とコップの中の氷が音を立てて揺れる。 恨みを込めた目線を送ったままそれを黙って受け取る。 「猫舌」 シャマルは人を見下したように笑うとまた食事を再開した。 俺はそれを睨みながらも舌だけ麦茶に入れて冷やす。 ああ、早く食べないと作った奴はともあれ味はおいしい食事が冷めてしまう。 もういいや、食べてるうちに治る、と半ば諦めて麦茶から舌を上げた。 あ、この手羽元の煮付けうまい。 二人とも無言でもくもくと食べ進めていた。 「ご馳走さま」 食べ終わり、箸を置いて流しまで持っていく。 まだ舌はひりひりとしていた。味に支障はなかったが如何せん痛い。 しかも間の悪いことに今日は暖かいものばかり出ていたのだ。 「舌治ったか?」 さっきまで俺が舌を入れていた麦茶、 表面に汗をかいたコップを右手に持って飲みながらシャマルは俺に尋ねた。 それを一口飲む。からん、と氷の揺れる音がやけに響いた。 「治んねーよ。あんな加熱すんな」 物はついでにシャマルの食べ終わった食器も運ぶ。 シャマルが食事を作った日は俺が後片付けをやる約束だから、 今のうちに済ましとこうとシンクの蛇口をひねった。 じゃーじゃー流しっぱなしで洗い始めると、 シャマルが右後ろに立つ気配がした。 けれど無視してスポンジに水を含ませて、洗剤を出す。 「ハーヤト」 無視してスポンジに泡を立たせた。 「ハヤト」 うるさいな、と思って振り向けば思ったより近い位置にシャマルがいた。 思わずドキッとして後ずさった。 しかしすぐ近くにシンクがあったためそんなに距離は離れない。 にやにやとしていてはっきり言って気持ち悪い。 「な、何」 「ハヤト、あーんってしてみ」 「…は?」 思わず間抜け面になってしまった。 「ほら。あーん。」 シャマルの節だった指が顎にかかる。 「いや意味わかんねえ」 「見てやるって言ってんだよ。痛えんだろ?」 「…」 ものすごい訝しげな目でシャマルを見つめる。眉間に思わず力が入る。 その眉間を顎を持っていないほうの親指でぐりぐりとされた。 正直痛い。手加減知らねえのかこのオッサン。 しないと離してくれそうにないから、しょうがなく口を大きく開けた。 久しぶりに空気に触れた舌の先がまたぴりぴりとする。 シャマルは俺の口のなかをちらりと見ていやらしく口角を上げた。 それを俺の目が確認したか否かのタイミングで、 そのまま唇を塞がれる。 「…っふ、」 口を大きく開いていたせいで 無遠慮にシャマルの舌が入ってきた。 ぴりぴりとしている舌にも遠慮なしで絡ませてくる。 歯列を舐めて、唇を食む。 ざらざらとしたシャマルの舌の感触が、否応なしに伝わってきた。 逃げようにも今まで顎を持っていた奴の手が後頭部に回っていて、 背を後ろにそらすだけになった。 後ろではシンクがずっとジャージャーと音を立てているのに、 それ以上に俺の耳にはシャマルが出す嫌らしい水音しか拾わない。 どれくらいの間そうしていたのだろうか。 シャマルが最後に俺の下唇を舐めて離すと、俺の息は上がっていた。 「うわ、水もったいねえ」 そう言って俺を抱きしめるように後ろの蛇口に手を伸ばして水を止めた。 思わず拳をシャマルの腹に入れた。 「ちょ、痛えな」 「何やってんだこのエロが!」 「やー、そこに唇があったから、ねえ」 そう言ってにやにやと俺の腰に手を回す。 近い。 いちいちこのエロは距離が近い。 そのたびにいちいちこっちがドキドキしてるのをこのオヤジは知ってるんだろうか。 距離が近いから心音が聞こえてそうで、知られるのが嫌だ。 「…」 ため息を吐き出して、シャマルの胸をたたく。 「おいちょっとどけエロ。俺洗い物しなきゃなんねえんだよ」愛に浸して
「いや、無理。今のちゅーで俺の暴れん坊将軍がね。」 「は?!離せエロシャマルが!ちょ、や、」 ああ、身体のどこかはわからないほどに、ぴりぴりと痺れる。