【悪魔の脚本】冬の悪魔


四人の旅人する神が季節を運ぶ世界。一国の策略により恵みの春と実り秋を失ったその他の国々は、夏と冬だけを繰り返す死の世界。そんな世界で眠りを司る死神、冬の悪魔と出会った少女。夏の悪魔の呪いを受けている彼女は、明日のない未来に横たわる死に怯え……穏やかなる死を求めて冬の悪魔を追いかける。老衰以外の死には関わらないと逃げ続ける悪魔だが…… 悪魔が触れれば少女は死んで、少女が触れれば悪魔が滅ぶ。そんな相殺関係の人と悪魔の恋物語。





【あらすじ】

眠るように安らかな死を与える冬の悪魔。
死神とはいえ一応は神様である彼が悪魔と呼ばれるようになったのは人々にとって彼が恐れ敬う以上に有害になったから。
世界は四人の旅する神によって支配されていたが、二人の女神が一箇所に留まり続け、それ以外は生の季節を失った。残るは夏と冬、人々には厳しい死の季節。
これまでぐるぐる世界を回っていた死神は、半年ずつおさめる方向を変えるだけで済むようになり、はじめて安住の地を手に入れた。
彼ら二人のささやかな幸福は、人々にとっては大きな脅威。存在すること自体が罪。存在悪として彼らは神の名を人々に奪われ悪魔と貶められた。
ささやかな幸せの中でも溜息と憂鬱は止まないものだ。悪魔が死ねばこの季節は終わる。そう思い山に踏み入れてくる者の何と多いことか。そんな中、冬の悪魔が出会った少女。彼女は彼を殺しに来たのではなく、殺されに来たのだと豪語する、少し変わった女の子。
冬の悪魔が人に触れれば、人は温度を失い命を失う。
悪魔が恋した人間が、彼に触れれば彼は解けて無くなる。

人と人ならざる者の恋の行方は………?


【登場人物】


冬の悪魔
(ヒエムス)

 冬を司る死神。溜息が北風、憂鬱が雪を生む。極力人と関わりたくなくて、雪山に引き籠もっている。
 一年中雪の解けない魔の山の白の森。そこに棲むという生きた伝説。冬らしくクールな男のつもりだったのに、唯の小言へたれ疑惑。

 
秋の女神は殺せるが、春の女神には勝てない。現エングリマの人格形成に大きな影響を与えた契約者。
 低血圧な死神。主に老人や病人に安楽死のような眠るような死を授ける。
 手で触れたもの全てを凍らせる。
 二人の女神の旅が終わったため、世界の半分を手に入れた。雪と北風が下僕。
 氷の鎌で秋の女神を殺すことが出来る。
 世界の半分を手に入れてからは山奥に引き籠もり、万年雪の中で暮らしている。
 彼の死を願う処刑の祭典春祭りが行われる度憂鬱な気分←憂鬱が雪、溜息が北風を呼ぶ。
 鈴とかベルとかがやたら服に付いてる。彼が近づくとその音が鳴る。
 出会うと凍死しますから逃げてくださいね、のサイン。

雪:
エセ京弁の女の子。最初の憂鬱に生まれた。手下を束ねる集合体の長みたいな存在で、悪魔が滅ぶまで存在する。一蓮托生。
北風:
エセ江戸っ子口調の男の子。雪と同じく悪魔とは一蓮托生。二人は冬の悪魔の子供みたいなもの兼仕事の相棒、唯一の話し相手だった。


フィーネ

 不治の病の女の子。20まで生きられないだろうと生まれた頃から言われている。儚げなイメージだったのに漫画にしたらあれ?
 夏生まれで夏の悪魔に呪われている。気温が上がると高熱がなかなか下がらず、夏場は家から出られない。
 冬しか動けないので、村では役立たずだと言われている。でも家は人形師の家。一応家で働いてます。
 儀式用に処刑される夏の悪魔と冬の悪魔の人形を幼い頃から作らされてきたので、悪魔には同情的。
 生まれたことを嘆いても、夏の悪魔のことは恨んではいない。
 生まれてきたからには生きたいと思うことも、幸せになりたいと思うことも悪いことじゃない。だって自分もそうなりたいと思うから。
 でもなれないから。だから殺して欲しい。安らかな眠りをくれるという冬の悪魔。
 彼なら優しい眠りを自分に授けてくれるはず。雪山を毎年毎年駆け回り、ようやく見つけた悪魔は……



夏の悪魔
(アエスタス)

 飢餓と熱病を司る死神。人から酷い扱いを受けたせいで人間嫌いになってしまっている。
 人を呪ったり虐げたるのが日課かつ趣味かつ生き甲斐。春の女神は殺せるが、秋の女神には勝てない。
 人に毛嫌いされて散々な旅ばかり送った過去から荒んで人を呪うようになった悪神。
 手で触れたもの全てを燃やしてしまう。
 二人の女神の旅が終わったため、世界もう半分を手にした。灼熱の鎌で春の女神を焼き殺すことが出来る。
 慈しみの四姉妹が下僕。(殺人の長女、暴力の次女、強奪の三女、戦争の四女)
 彼が来ると日照時間が上がり、作物が腐り、水不足に悩まされる。
 病と飢餓の死神。
 四姉妹はそれから発展する災い。夏の悪魔と彼女たちが悪意を持って歌い踊い通り過ぎた土地は死の舞踏がそれに続く。
 末妹は足が遅く、旅の中はぐれる事が多く、遅れてやって来たり何故か先回りしていたり。


春の女神
(ウェール)

 
恵みをもたらす女神。冬の悪魔を殺せるが、夏の悪魔には勝てない。
 冬の悪魔に悩まされる人々が訪れを待ち望んでいる希望の女神。
 終焉のフルート(春風のフルート)の奏者。
 彼女がこれを間近で吹くと冬の悪魔を完全に殺すことが出来る。
 うっかり人間に恋をしてしまったせいで、地に足が根付き旅を中断してしまっている。
 正義感が強いが心優しく情に厚いため、それが仇となった感じ。
 滅びかけていた国を哀れみ、そこに長く留まったのがそもそもの発端。国を憂いながら死んでいった王に心を寄せたため、その国を守ることを約束してしまった。
 夏の悪魔と四姉妹との戦いで弱体化し、その国から出ると即悪魔に出会い殺されてしまうため(夏の悪魔の支配半球を通らなければ安  全地帯(冬の悪魔の支配半球)に行くことが出来ない)、今では国から出られない。
 世界には他にも困っている人がいるのに、目の前の人を見捨てられない精神がそもそもの過ちで敗因。


秋の女神
(アウトゥム)

 実りをもたらす女神。夏の悪魔は殺せるが、冬の悪魔には勝てない。
 酒と宴に弱い豊穣の女神。舞姫。飲んだくれ。
 彼女の演舞は夏の悪魔を完全に殺せる。
 実りの季節のため彼女が長く留まると、美味い食べ物がわんさか出来る。収穫三昧。宴で酔っぱらい、人々に騙され何百年も同じく国に留まっている。春の女神共々世界の均衡が崩れた原因の一つ。普段は温厚だが、怒ると男神に変わる破壊神。



村長
 生け贄の人形では春祭りが成功しない。生け贄が足りない。神は生きた人間を捧げなければ眠りから目覚めない。……というのは建前。本音は口減らし。村の食料もそこが見えてきた。役に立たない者から処刑していこうという考え。それで抜擢されたのは畑仕事も出来ず、余命幾ばくもないと宣告されているフィーネ。割と酷いことを考えているようだが、そこで食人思考に陥らないだけ『羊人狼』の人々より遙かにまともな人間ではある。



【『続・冬の悪魔』】

エングリマの出生に関わる物語。
※魔王は基本的にその地位に相応しい魂を取り込み肥大化していく。
正確には今のエングリマの意識を構成するきっかけとなった魂の話

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