002:秘密[赤+黒]
「なあ、ガイナンさー、女、好き?」
クーカイファウンデーション理事の執務室で、Jr.は一つずつ布で丁寧に拳銃を拭ながら書類に目を通すガイナンに訊いた。
「唐突だな。どういう意味で訊いている?」
「いや、だからさ、女抱くの好きなのかってこと」
「嫌いじゃない」
「ふーん」
「何故そんなことを訊く?」
「俺、一生女抱くことできないのかなーと思ってさ。十二歳の身体じゃな」
「十二、三歳でセックスする子どもなどいるだろう」
「そりゃそうなんだけどさ。俺、見かけはどうであれ実年齢二十六歳だからさ、子ども相手にすりゃ犯罪だし」
「ふむ」
「かといって、それなりの歳の女を相手にしようとも、こっちが相手にされない」
「難しいな」
「だろ?」
「おまえ、そんなに女が抱きたいのか?」
「抱きたいというよりも、そういったことをしてみたいだけさ。性衝動はさほどあるわけではないさ。普通に成長していた十二歳のままで止まっている。ガイナンだってあっただろう。十二歳のころの肉体感覚さ」
「忘れたな」
ガイナンは素っ気なく答えた。
「俺、このままずっと子ども扱いされるんだろうな。シオンだって『くん』づけだし、メリィやシェリィだってさ俺の本当の年もわかっているのに姉が弟に接するような口調になるんだ。俺の方がずっと年上なのに。ガイナンに対する態度と全然違うだろう」
「見た目の印象に抗うことは難しい。人は見た目で騙されるさ」
Jr.の身体は十二歳の思春期を迎えようとするところで成長が止まっている。
声変わり前の甲高い声。
精通もまだ。
そんな微妙な状態で時間を止められてしまった。たぶん、一生このままだ。普通の男がそうするように女を抱くことなど望めない。
それが、どういった感覚なのかはガイナンにはわからない。
Jr.は手入れを終えた拳銃を片づけながら、考え込むガイナンの顔をのぞき込んだ。
「おいおい、そんな難しい顔すんなよ。わりぃ、俺らしくなかったな。ちょっと言ってみたくなっただけだから気にすんなって。それとさ、ここだけの話だけど、悪いことばかりじゃないぜ。女性陣、俺が男だって意識しないから、警戒しないで目の前で着替えとかしてやんの。たまに我に帰るみたいだけどな」
へへへと、Jr.は笑う。
ガイナンは一つため息をついてから立ち上がるとJr.の肩に手をのせ言った。
「俺にとっておまえは、ずっと頼りがいのある兄貴でありリーダーさ。昔も今も、そしてこれからもだ。それは忘れないでくれ」
Jr.は頷き、「俺、そろそろ行くわ」と立ち上がった。
そして、ドアの前で振り返り、言った。
「なあ、ガイナン……俺それだけはおまえに感謝している。本当だ」
そんなJr.の背中をガイナンは微笑で見送った。
この二人大好きです。意外にもガイナン氏はサーガで一番好みかもしれません。でも、というかだからか、黒×赤だけは受け付けないんだよなー。シタフェイがまったく駄目だったことに似た感覚で。ゼノサーガで唯一一大勢力(?)を築いているカップリングなのに、残念(笑)