070:ナミダ[バトルメンバー+α]
クーカイファウンデーションにあるプライベートビーチ。
そこで、すでに日常になってしまったバトルの疲れを癒すことにした。
「シオン……、年頃の娘がビキニというのははしたないですよ」
「人のこと言えないでしょう? 兄さんの水着の方がよほど恥ずかしいわ」
言い合う兄妹。妹の水着はいたって普通の白いビキニ。かたや兄の水着は赤い越中ふんどし。
どちらが普通でないかは一目瞭然である。
そこへよせばいいのに、将来自分の兄になるだろう(妄想)ジンへのご機嫌をとろうとアレンが口を挟んだ。
「いやあ、お兄さんの水着もなかなかすてきですよ」
「なに、兄さんに媚びているのよ! アレンくん。ていうか、アレンくんの縞々水着も時代錯誤よ。ダサー」
シオンはぷいと横を向いた。
「しゅ、主任~」
今にも泣き出しそうなアレンとシオンのやりとりをフォローするでもなく、楽しそうにジンは眺めている。
そこへ、きわめて平凡な水着で登場したケイオスが仲裁に入った。
「まあまあ、ジンさんの水着もアレンさんの水着も極めてトラディッショナルなデザインですよ。ジンさん、本当にお似合いですね」
と、にっこり笑う。
「もう、ケイオスくんまで、そんなこと言うから兄さん調子に乗るのよ。だいたい、ふんどしなんて、水着じゃないわよ。下着なの、下着。ケイオスくんだって、いくらなんでもブリーフ履いて泳ごうなんて思わないでしょう? それくらい変なことなのよ。わかる?」
状況を悪化させるだけで、仲裁にはまったくなっていない。
かたや、お子さまグループ。
「やあ、モモは水着もよく似合うな。うん、かわいいよ」
「Jr.さん、ありがとうございます。モモとても嬉しいです」
「皆、今日は気晴らしになればいいけどな」
遠目には楽しそうな、ジン、シオン、アレン、ケイオスの四名を眺めてJr.は言った。
「ええ、とてもいい気分転換になりますよ。……あれ?」モモは、きょろきょろ周りを探した。「そういえばジギーは? ジギーも水着をせっかく用意したのに……」
「いや、おっさんにはちょっと頼み事があって少し遅れるけどちゃんと来るさ。……あ、いたいた」Jr.はジギーを見つけて手を振った。「ここだよ、おっさん、コスモス」
ジギーとコスモスは運んできた大きなケースをどさりと砂浜に置いた。
「あ、ジギー、こっちですよ。でも、ジギーは水着も普段の格好もあまり印象変わりませんね」
モモはにっこりと微笑んだ。
シオンもコスモスを見つけて声をかけた。
「コスモス、こっちへいらっしゃい。{それにしても、ケビン先輩ったら何故私よりスタイルが良く設計したのかしら)」
「えーと、これで全メンバーそろったかな?」
Jr.は一人一人の顔を確認する。
「Jr.何か今日は特別な企画でもあるのか?」
ジギーは怪訝な表情で訊いた。
へへへ……とJr.は笑う。
「ああ、今日は、ビッグウェンズデイだ!」
「ビッグウェンズデイ??」
皆が声を合わせて聞き返した。
「ああ、そうだ。これを用意した」
と、ジギーとコスモスが運んできたケースを開けた。
中には人数分のサーフボード。
「今日は大きな波を起こし放題だ! みんなで楽しくサーフィンしようぜ」
Jr.はコネクションギアを立ち上げ命令した。
「波だ、特別でかい波を起こしてくれ!」
浮かれ気味のJr.にモモは訊いた。
「あの……、Jr.さんサーフィンしたことあるんですか?」
「ない」
きっぱりと答える。
「では、ここにサーフィンの経験者は?」
恐る恐るシオンは訊いた。
しばしの沈黙。
人口ビーチに押し寄せる波は徐々に荒くなってきている。
皆、じりっと後ずさった。
「逃げろ~、波だぁっっっ!!!」
すみません、疲れています。
「涙」だと書けそうもないので、「波だ」……(滅)