244:本日開店[アレ+シオ+α]
第二ミルチアへ立ち寄ったエルザ一行。宙港で手続きを済ませる。
海近くに新しいレストランがオープンしたという。その宣伝ポスターが宙港のいたるところに貼ってあり、否応もなく目を引いた。
アレンにすばらしいアイディアがひらめいた。
――そうだ、このチャンスを逃す手はない。主任をランチに誘おう。
「へえ、今日オープンじゃない。久々に海でも眺めながらのんびりランチもいいわね」
「主任、ランチなら僕が……」
と言いかけたアレンをJr.が悪気なく遮った。
「お、いいなそれ付き合うぜ。モモもおっさんもケイオスもちろん付き合うよな」
――わっ、気をきかせてくれよ、Jr.。
「わぁ……、海を見ながらランチですか? モモ、はじめてです。ジギーは大丈夫ですか?」
「別にかまわんが」
――こらぁ、モモちゃんやジギーまでも……しくしく。
ケイオスもおっとりと笑い同意した。
「僕もお付き合いしますよ。海はここから近いのかな? シオン」
――ケ、ケイオス。君は一番の理解者だと信じていたのに。
そんなアレンの気持ちなどまったく気づく様子もなく、シオンが話をまとめた。
「ええ、ハイウェイを飛ばせばすぐよ。みんなで一緒に行きましょう」
シオンは後ろをちらりと振り返った。無表情のままコスモスが立っていた。
コスモスはアンドロイドであるが、傍目には普通の少女に見えないこともない
「コスモスも付き合いなさいね。たまには一緒にのんびりしましょう」
「のんびり。すべての数値が許容範囲内を維持できています。今現在メンテナンスの必要性はありません」
「もう、この子ったら。とにかく私たちのランチに付き合ってくれればいいのよ」
「了解しました。しかし、兵器の私にとって非生産的な時間であることをご理解ください」
「では命令よ。非生産的な時間を一緒に過ごしなさい」
――はいはい。もうこうなったら、誰がついてこようが同じですよ。
アレンは情けない顔をして、皆の後をついていった。
海を見下ろせる高台にあるレストラン。少し待たされたけれど、運良くテラスに席がとれた。オープンテラスからの眺めはすばらしく、海風が心地よい。
一同は久々にゆっくりと食事をした。
「こういった景色のいいところで食事すると、いい気分転換になるな」
Jr.が、遠くに海を眺めめながら言った。
「いつも閉鎖空間の中での食事が普通だからね。こういった食事に比べるとどんなに豪華な料理が並んでも味気なく感じるのは不思議だね」
ケイオスも食事を終え、コーヒーに口をつけた。
「とても、おいしく感じるんですね」
モモがデザートのケーキを口に運びながらにっこりと笑った。
――でも、やはり一言、言っておかないと。『次はディナーに主任をお誘いします』って。
「次はディナーに主任をお誘い……」
アレンは思い切って言葉にしてみるが、声が小さすぎてシオンの耳には結局届かなかった。