023:アイスクリーム[マグ*ネス]
マグナは、息せき切ってネスティの部屋に入ってきた。
手元には何かの入った袋。
「なあ、もらったんだよ。半分食べたんだけど、おいしかったからからネスにもあげようかと思って。食べてみて」
そう笑いながら、アイスクリームが入っているだろう袋を差し出した。
見れば、袋はぐっしょり濡れている。
「なあ、マグナ、アイスクリームだろう。もうすっかり融けているんじゃないか」
「え? あ! ええええ~~~?」
袋の中を覗いて、アイスクリームの惨状にマグナはしばし声を失っている。
ネスティは頭を抱えた。
ここまでアイスクリームを運ぶまでに何分かかったか知らないが、この炎天下アイスクリームを運ぼうなど、きちんと保冷しない限り、あっという間に融けるのに決まっているだろうに。
「君はバカか。アイスクリームは融けるものなんだ」
「そうだけど、俺、ネスに食べてもらいたくて」
もう、今にも泣きそうな表情だった。
貸してみろと、ネスティはマグナから袋を奪って中を覗く。ほんと、ぐじょぐじょだ。
そして、袋の中に手を突っ込み、融けたアイスクリームを指先につけてぺろりと舐めた。
マグナは聞いてくる。
「どう? おいしい?」
そもそも、おいしいとか不味いといった感覚が一般の人間とは違うネスティは食べ物の味について感想を求められることが一番困る。
アイスクリームも例外ではない。
融けてしまったアイスクリームを舐めての感想は「糖分がやたら多い」の一言だった。
ネスティはマグナに言った。
「融けてしまえば、アイスクリームとは言えないだろう。これでおいしかったら、凍らす意味はない。だから、今度はちゃんと凍ったアイスクリームを一緒に食べに行こう」
マグナは「うん、約束だ」とやっと笑顔を見せた。