239:ブーン[マグ*ネス]
「暑い!」
誰もがそういうほど、その日は蒸し暑かった。夜になっても一向に温度は下がった感じはしない。
「クーラーはないのか!」
レナードはトレードマークのコートを脱ぎ捨て、だらしなく胸元を開け、手近にあったセンスでぱたぱたと仰ぐ。
「確かに、暑いわね。ここでは、年に一度か二度あるかないかぐらいの暑さよ」
ミモザとアメルが皆に冷たい茶を配った。
茶を受け取り、ネスティはあたりを見渡すが、マグナがいない。
さっさと、一人部屋に戻り寝ているのだろうと、ネスティはさほど気にとめなかった。ここのところ、肉体の酷使が続いている。今日も疲れているのだ。
茶を飲み終え、そろそろ消灯だと各自寝室へと向かった。
ネスティとマグナの部屋。
ドアノブに手をかけ、ネスティは静かなはずの部屋で何か音がすることに気がついた。
ブーンと。
いったい、何の音だ?
ネスティは部屋へと飛び込んだ。
薄暗い部屋の中で、確かにブーンという機械音が響いていた。
目を凝らしベッドを見れば、上半身裸で、腹を出したままのマグナがだらしなく転がっている。マグナの髪は風に揺れている。
マグナの斜め上を見れば、プロペラを回し風を送るウィンゲイルが。
「うわぁっ!」
ネスティは慌てて、ウィンゲイルにプロペラを回すことをやめるように命じた。
ベッドにかけより、マグナの肌に触れる。冷たい。いくら暑いとはいえ、風を当てっぱなしだったのだ。身体が冷え切っていて当然だ。
「君はバカか。これでは寝冷えするだろうに。だいたい君は……」
説教をしそうになり、やめた。どうせ起きやしない。
嘆息しながら、ウィンゲイルを呼び寄せる。触れれば熱い。
オーバーヒート寸前だ。
君は機界の召還獣をなんだと思っているのだ。
夜中。
トイレに何度も駆け込むマグナに、ネスティの眠りは妨げられた。
やはり、腹を冷やしたな。
自業自得だと、朝になったらたっぷり説教してやろう。
ネスティは寝たふりをして、マグナがトイレへと駆け込む回数を冷静に数えていた。