183:仮眠30分[マグ*ネス]
二人同じ任務を協力してこなそうとしても、別々に行動しなければいけないことがほとんどになっていた。適材適所とはよく言ったもので、文献をくまなく調査する根気と集中力の必要なところはネスティが請け負い、身体を使う任務はマグナが請け負うことばかりだった。
その日は特に顔色が悪いように見えた。基本的にネスティは色が白い。というか決して健康的とはいえないような蒼白い肌をしている。
でも、ここまで酷くはない。マグナは心配になる。
「ネス……顔色がえらく良くないみたいだけど、どうしたの?」
「ここのところ睡眠不足が続いていているだけだ。君の分担は滞りなく進んでいるようだが、こちらは躓きっぱなしだ。実際、あまり時間がないんだよ。寝ていたら間に合わない」
「ネス、そんなに根を詰めてたら倒れちゃうよ」
「他に代われる人間がいないんだから仕方ない」
「それは、そうだけど……」
マグナは口ごもる。
確かにここのところネスティは図書館にこもりっぱなしだ。大量の文献から適切な資料を集め系統立てて整理をする必要があるのだという。ネスティに協力依頼がきたのは、他にこなせそうな人間がいなかったからだろう。
「マグナ、今何時だ?」
「二時を過ぎたところ」
「そうか、図書館には三時までに行けばいいのだから、少し寝かせてくれ。三十分だ。三十分たったら起こしてくれ」
そう言い終え目を閉じるたネスティのそばにマグナはかけよった。
「ネス……こんなところで昼寝をしたら、風邪ひいちゃうよ」
ネスティは不機嫌そうに薄目を開いた。
「昼寝だと? 君の惰眠でしかない昼寝と一緒にしないでくれ」
「昼に寝るから昼寝だろ? 同じじゃないか」
「仮眠と言ってくれ……」
そう言い終えたネスティは既にソファーの上で、すーすーと寝息をたてていた。
ネスティはいつもマグナより遅く寝て、マグナより早く起きている。だから、マグナはあまりネスティの寝顔を見ることはなかった。その寝顔は、普段の偉そうな兄弟子からは想像もつかない幼く見えた。三十分で起こすのはとてもかわいそうな気がした。なによりも、安心しきった無防備な兄弟子の寝顔をいつまでも眺めていたいように思う。
でも、起こさなかったら起こさなかったで、延々と文句を言われるに決まっている。
マグナは、せめて風邪をひかせないようにとブランケットを上からふわりとかけた。