131:炎[マグ+ネス+アメル]
野営に焚き火は欠かせない。
ぱちぱちとたまに薪がはじけ、火の粉が舞い上がる。
メンバーには女の子もいるのだから、なるべく野宿は避けたいのだが、そうもいかないこともある。
たまにのことだからだろう、当の女の子達はむしろはしゃいでいたりもする。
気温はさほど低くない季節だったが、夜はやはり冷える。自然に仲間達は焚き火の傍に集まってくる。
はしゃぐ女の子達の輪にアメルがいないことにネスティは気づく。
「マグナ、アメルはどうしたんだい?」
「え? ああ、アメルは焚き火の傍はいやなんだってさ」
周りを見渡せば、少し離れたところにある木によりかかり、ぼんやりと月を眺めている。
「そういえば、アメルが焚き火の傍にいるところを見た記憶がないな」
「うん、アメルは暑がりなんだね」
いや、そんなはずはない。
むしろ、寒がり、冷えやすいと言っていたような気がする。
ネスティははたと気が付いてアメルが佇む木の方へ振り返った。
「君はバカか? ……いや、バカは僕も同じだ」
「どうしたの? ネス」
「アメルが住んでいた村は……」
そこまで言われてマグナは、はっとした表情をした。
アメルの住んでいた村は、黒い騎士たちに焼き払われた。
アメルを、アメルの持つ特殊な力を欲してだった。
あの後、アメルはずっと自分を責め続けていた。何もできなかった自分。無力な自分を。
でも、そんなことネスティもマグナも同じだった。なんとかアメルを守ることができたくらいだった。
多くの村人が燃えさかる炎の中、犠牲になった。
アメルにとって、炎はあの時の惨状を呼び起こすものでしかない。燃えさかる炎を見るのは何よりもつらいことなのかもしれない。
「マグナ……、辛い記憶もやがて癒える。僕が君に癒されたように」
そう言いながら、ネスティは紅いマントを脱いで、ばさりとマグナに投げた。
「ネス?」
「僕はここにいれば寒くない。ぼやぼやせずに彼女の傍にいてやれ」
「うん、ありがとう、ネス」
マグナは頷き、ネスティのマントを手にアメルの佇む木の方へと走っていった。