020:ジャンプ![シタ+シグ+フェイ]
「それでだ、ヒュウガ。これを俺に履けと?」
シグルドは、腕を組み正面に座るヒュウガに油断の無い視線を向けた。
相変わらずの食えないにっこり笑いを浮かべて、ヒュウガは「はい、使用モニターをお願いできればと思いまして」と答えた。
「なぜ、俺なんだ? カールに先輩はどうした」
「ええ、逃げられました」
「逃げられるようなものなんだろう、これは」
ヒュウガは少しむっとした表情を向けた。
「失礼な。私はすばらしい性能だと自負していますが」
「ほう、そのすばらしい機能とやらを説明してみろ、ヒュウガ」
「ええ、これを履くと、軽くジャンプしただけで、2m以上、跳び上がることができます。垂直にね。しかも、普通に歩く分にはまったく跳び上がることもなく普通です。誰も気づきませんので、いざという時にその性能を発揮することができるのですよ。ということで、シグルド、是非履いてみてください」
「どこが、普通だ。このデザインのどこが」
シグルドは、テーブルに置かれたその履き物を指で示し言った。
「何故、そんなこと言うんですか。健康にもいいんですよ、水虫にはならないし、浮き指予防にももってこいです」
「ヒュウガ……、だからと言って、下駄は目立ちすぎるだろう。下駄は。だいたい何故下駄なんだ?」
「……シグルド、あなたも良い性格していますね。本当に痛いところをつく」
「ふーん、何故なのか理由を言ってみてくれ」
「それはですね、普通の靴に搭載することに失敗したんですよ。今の私の技術力では下駄搭載がせいぜいでして」
あはは……とヒュウガは笑った。
「普通の靴に、搭載できたら持ってきてくれ」
「そうですか、靴に搭載できればあなたは試してくれるのですね」
「約束はできんが、一応考えてやってもいい」
「はい、約束ですよシグルド」
ヒュウガは、ジャンピング下駄の改良に燃えるのであった。
だが、その完成を待たずに、シグルドはソラリスを去っていった。
――――それから、十ン年後、アヴェ辺境の村ラハン。
「先生、また何か新しい発明?」
好奇心につぶらな瞳をキラキラ輝かせ、フェイは身を乗り出した。
「ああ、フェイですか。良いところにいらっしゃいましたね。面白い靴があるんですよ。よろしければ、フェイに差し上げます」
「え? どんな靴?」
「これはですね、ジャンピングシューズといいまして……(以下略)」
「わぁーー!! 先生、すごいや。俺、本当にもらってもいいの? 一点ものなんでしょう? これは」
シタンは、どうせフェイくらいしか履いてくれないし構いませんよという本音を押し隠し言った。
「もちろん、フェイに履いてもらいたくて作ったのですよ。これからきっと役に立ちます。是非履いてくださいね」
「ありがとう、先生」
大喜びで、怪しいジャンピングシューズをフェイは受け取った。
「フェイは本当に素直ないい子ですね」
シタンは、はしゃぐフェイをみて相変わらずの食えない微笑を浮かべた。
ゼノギアスってジャンプして、人の頭の上にヒョイとのっかたりできたよなー、ということを思い出して。