011:酔い[シグ+ラム]
「少々飲み過ぎたかな」
ラムサスは宙を仰いで言った。
久々に四人で飲むことになった。
飲むはめになった理由は、何かあったような気はするが、覚えていない。その程度のどうでもいい理由だったのだろう。
飲んだ後、ヒュウガはやり残したことがあると言ってそのままラボへ。ジェサイアはめずらしくまっすぐ家に帰っていった。
今、ラムサスはシグルドと一緒に、寮に帰る途中だった。
飲み過ぎたとはいえ、体質的に酒に弱いわけではないラムサスにとって、少々酔いがまわったというレベルだった。
若干低めの大気温に設定されたソラリスの夜。
肌寒いくらいのはずだが、アルコールのせいか頬が熱い。
「シグルド……おまえ、一滴も飲んでいなかったな。訓練してなんとか飲めるようにとかならないのか?」
「ああ、体質的にアルコールを分解できないから、訓練してどうこうなる問題ではないらしい。無理して飲むと肝臓を壊すとヒュウガにも言われた」
「そうか」
ラムサスは下を向く。
シグルドはアルコールに極端に弱い。
どのくらい弱いかと言えば、一口飲めばぶったおれるくらい弱いのだ。それなのに、他三人の飲み会にいつもジュースでつきあっている。
「いつも、つきあわせて悪いな」
「いや、別にかまわない。……ただ、不満はあるがな」
「不満?」
「酔った勢いとか、酔いにまかせて……といったことに無縁であることが、不満だ。そりゃ一口でも飲めば酔うが、酔った勢いで何かする前にぶったおれている」
「何故、そんなことに不満になる?」
「酔った勢いでついやってしまったことに対して世間は甘い。それに何よりも、自分自身を納得させる理由になる。『まあ、仕方ないか』ってな」
「酔った勢いで、普段できないような大胆なことをするってことだろう? それは最低のことだぞ」
「そうでもないさ。たとえば」
シグルドは笑って、ラムサスの顔をのぞき込んでいた。じっと見つめてくる瞳。吸い込まれそうな深い青。見とれていたら、シグルドの顔がいきなり近づいてくる。唇に柔らかく生温かいものが一瞬触れて、離れた。
ラムサスは呆気にとられてシグルドを見つめる。シグルドはにやりと笑った。
「酔うことができれば、こんなことをもう随分前にやっていただろう。しかも、もっと抵抗なくな。まあ、その程度のことだが」
シグルドはいたずらっぽく笑った。
しばらく呆然と立ちすくんでいたが、ラムサスは気を取り直して言った。
「シグルド、おまえからかったな」
「まあ、酔った勢いってことで忘れてくれ」
おまえは酔っていないだろう、という言葉をラムサスは飲み込んだ。そして、薄苦笑いを浮かべて言った。
「そうだな。酔った勢いのことだ」
二人は目を合わせて笑った。
ソラリスって、飲酒の年齢制限無いのでしょうか。シグルドがソラリスを出たときは十七歳のはずで、ゲーム中の会話から、みなさんそれ以前に平気で飲酒していたんですけどね。もっとも、日本の飲酒は二十歳からですけど、これも国によって違いますね。年齢制限無い国やもっと若くから飲める国もあったかと。