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滅びへの誘惑

僕たちの一族は、一族の記憶をこういった形で子孫に伝えることを覚えてしまったときから、滅びの道へ足を踏み出していたのかもしれない。

己の内にある巨大なデータベースから情報を引き出す。

それが、知識としてのただの客観的な情報であるだけならまだ幸せだったかもしれない。普通の人間達にとってそうであるように、過去の記録に過ぎないものであるのなら。

しかし、悔恨、哀しみ、苦しみという、強い痛みを伴うそれは、融機人たちにとって、過ぎ去った出来事ではなく生々しい現実だった。

それでも、ロレイラルに一族が暮らしていた頃は、まだずっとましだった。

戦火を逃れ、リィンバウムに亡命してからの迫害と屈辱の日々は、一族の記憶に耐え難い苦痛と絶望を間断なく与え続けた。そしてそれは、代を重ねるごとに膨れ上がっていく。祖先の苦しみに自分の苦しみを加え、子に伝える。その子はさらに自分の痛みの記憶を我が子に引き渡す。引き渡さないで済む術を融機人たちは知らない。

人間のように、忘却能力を持っていないのだ。どんなに辛い記憶もただ抱え込むことしかできない。

膨れ上がった苦しみに過去はなく、未来永劫、融機人たちを解放することはないのだ。

ロレイラルに亡命したころはまだ、種族として存続を続けることが可能な個体数はあった。それが、緩やかなカーブを描き出生率が低下していった。

そして、融機人たちを管理する蒼の派閥の人間が気が付いた時には手遅れだった。性欲の致命的な欠落が、自然繁殖を難しくさせていた。子どもに負の記憶を引き渡すことを無意識に拒否した結果だった。

融機人たちは、その苦しみをただ、断ち切りたかっただけだったのだ。

蒼の派閥は、絶滅しようとする種の存続を少しでも長らえようと、人工的な繁殖を試みる。

そうして、ネスティ・ライルは生まれた。

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