女主人公に描かれるジェンダー
ジルオール・インフィニットを現在プレイ中。
女性主人公で、「旅先の小さな町」スタートで、アンギルダンEDと、希望EDを見ることがでました。
さらに、男主人公限定の「王城のある大都市」の男主人公で、ザギヴEDも見ました。
で、次は女主人公限定の「黄金色に輝く畑」のスタートイベントだけとりあえずプレイ。
スタートイベント後の主人公は、どのスタートでもさほど変わらないというか、その後の選択によって変化します。
「黄金色に輝く畑」は、先にプレイした「旅先の小さな町」と対になる設定ですね。
ロストールで敵対する王妃とレムオン、どちらかの側に主人公が属するかがスタートで決まっていて、旅先は前者、黄金は後者になります。
もちろん、主人公以外のキャラ同士の関係はどのスタートでも変化はありません。スタートによって主人公との関係が変化するくらいです。(赤の他人が、親子だったり、兄妹だったり、幼なじみだったりと主人公周辺の人間関係が変化しますが、主人公以外のキャラ間の敵対関係などはどのスタートでも変化はありません。旅先で王妃の密偵であるフリントは主人公の父親でも、他のスタートでは王妃の密偵ということだけで登場、もしくは名前が出てくるだけです)
前々から感じていたのですが、たとえばサモンナイトなど、男主人公と女主人公が選択可能であり、基本ストーリーが変化ないゲームだと、ファンサイトでは「○○×女主人公」というカップリングが元気になりますね。
ジルオールも同じように、女主人公と組み合わせたカップリングが多いように思えます。ファンサイト巡りをまだしていないので、確信はありませんが。
だから、たぶん女主人公は女性に人気があり、受けるのだろうとは思います。
PS版、無印のジルオールプレイは女主人公ではプレイしていません。
今回、はじめて女主人公でプレイしてみましたが、違和感を拭えません。
その理由を少し考えてみることに。
もともと、ジルオールは「プレイヤー=主人公」といったスタイルをとっています。基本主人公に意思は描かれていません。台詞も一切ありませんおで、主人公は他キャラにジェスチャーで何か話しているふうにプレイヤーに見せます。話かけられたキャラは主人公の言葉を「あなたは、○○××だっていうのね」というように代弁してくれるだけです。だから、主人公の一人称が「俺、私、ぼく、あたい、あたくし、わらわ、俺様」のどれだかもわからないし、さらに相手をさんづけか、ちゃんか、様づけしているのかもわかりようがありません。
プレイスタイルによって、生き様に一貫性がなく、ポリシーの欠片も無い、いい加減なキャラクターができあがってしまうのです。寝返って、仲間を売ってしまったり、故郷を侵略しようとする敵国の副将になってしまったり。
さらに、父親が仕え散々世話になったロストール王妃配下にいながら、いや、それどころかロストールのノーブル伯という立場でありながら、敵国ディンガル側の副将になりロストール侵攻をすることもできます。(っつーか、ディンガル側も採用に際して、調査不足だよ!)
侵攻が失敗に終わって、のこのこと王妃に謁見したりして、しっかりバレていて、王妃が口止めしていてくれていたり。
ん、なわけねーだろ!! なこと多々。……これ、別な意味での引っかかりポイント。
それでも、男性主人公はまだマシな気がします。
実は、女性を主人公にしたほうが、矛盾点が多く見られます。
たとえば、男女ともにロストールという、貴族が政権を握っている王国が大きな舞台になるのですが、ここでは明らかに、古典的ジェンダー価値観に支配されている国であるという設定です。
アイリーンは父親を見習って幼いころから騎士を目指しますが、生まれ故郷ロストールでは女性が騎士になれないことに失望し、家を飛び出てしまいます。
そういった明確な男女の社会的役割が固定されている社会であるのだと推測できます。
そこで気になるのが、実質ロストールの実権を握っている王妃エリスです。夫である国王より王妃が握っている以上、女性の地位は低くないだろうと言うツッコミはありそうですが、それは違います。
エリスは様々な策略を用い、政敵を排除する。手紙一つで国を潰したことすらあるといいます。が、そもそも、水面下で策略を用い、国を動かす方法がとられるというのは、女性であるエリスにはそれ以外の方法をとる術がなかったからだと言えます。
政治に無関心で、無能な夫や、兄、そして何よりも娘といった家族を守るためには、策略を用いる手段しかなかった。それだけです。
ということで、「女性は家庭を守る」という古典的価値観で、エリスは育てられてきたのではないかと考えています。
実際、旅先スタートでだけ聞くことができるエリスの話からすると、もともと有力貴族の娘で完全世間知らず、政治のせの字もわからない彼女が、デジャワの変にて、その陰謀をいち早く察知、自らの意思で動いたのは、家族を守りたい一心だったのです。だから、彼女も女は家庭という古典的価値観を中心に思考がまわっているように思えます。
ゼネテスが「叔母貴一人ならば逃げられるだろう」と、その後に起きるレムオンの謀反を想定し、出陣前に確認すると、彼女は「守るべき、夫と娘が居る」と返します。
話がそれましたね。エリスはジルオールの女性キャラの中で一番好きなので語り出すときりがありません。
そんな男性中心社会なのに、女主人公の場合、あっさりレムオン下では伯爵という爵位と騎士の称号まで貰えてしまいます。女性も副将という地位で戦争で指揮をとることもできるのです。
別に、そういった価値観の世界であるという設定ならばそれでも良いと思います。
でも、それでは「女性は騎士になれない」といったアイリーンの悩みはなんなのかとなってしまいます。
アイリーンが平民で、女主人公が建前上、レムオンの異母妹であり、貴族だから別格という解釈もありそうです。
そういった古い価値観は貴族社会の中でこそ色濃くなるのが普通です。
特に、政略結婚などが幅を利かせているロストールで、これは不自然と言えます。
※その後、わかったことですが「ロストールでは、女性が貴族の場合、騎士になれrが、平民の場合は騎士になれない」という設定が案の定、あるようです。女性主人公でこのノーブル伯展開にするためには、必須だろうけど、こじつけ感は否めないですね。
女主人公でプレイすると、そういった設定の矛盾が強くひっかかってしまいます。
男性主人公ならば気にならないのですが。
さらに気になるのが、この主人公が人から賞賛される、ネタ(理由)が、ジェンダーとしての男性性の「男らしさ」に固定されているところにあります。
あくまでも、それは戦闘における強さにや戦争など戦いでの活躍です。(……が、RPGならば仕方ないか)
女性も男性と同じ舞台で活躍する……ということに、共感する女性プレイヤーは多いだろうことは理解できます。
しかし、ひねくれものの自分は「ちょっと待て」と言いたくなるのです。
男らしさへの賞賛がどうも受け入れがたいのです。
そういった男社会の価値観を基準に、その土俵のの上で同等の活躍ができてはじめて賞賛される……というのは、なんかとてもイヤな感じがします。
もちろん、そういった強い女性を認めないわけでも、女は女らしさが大切だなんて主張しているわけではありませんので、誤解なきようお願いします。
……これについては、長くなりそうなので、別で語ってみたいです。
が、まとめる時間あるのか??
まあ、機会があればということで。